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米国での王座奪取は37年ぶり快挙!
伊藤雅雪「もっとデカイ試合を」

posted2018/07/31 08:00

 
米国での王座奪取は37年ぶり快挙!伊藤雅雪「もっとデカイ試合を」<Number Web> photograph by Getty Images

伊藤雅雪は下馬評を覆し、アウェーのジャッジも大差をつけるほどの完勝を収めた。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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 37年ぶりの快挙である。28日(日本時間29日)、米フロリダ州キシミーで行われたWBO世界スーパー・フェザー級王座決定戦で、同級2位の伊藤雅雪(伴流)が同級1位のクリストファー・ディアス(プエルトリコ)に3-0判定勝ち。

 日本人選手が米国で世界タイトルを獲得するのは、1981年の三原正(WBA世界スーパーウェルター級)以来のことだった。

 日本人選手が海外の世界タイトルマッチで勝てない理由はさまざまあるが、最大の理由は、選ばれたチャレンジャーがそこまで期待の高い有力な選手ではなく、王者サイドから「手ごろな相手」とみなされ、挑戦者に抜擢されるからだ。

 テレビ局も歓迎するようなホープは日本にチャンピオンを呼んで世界に挑戦するのが少なくともこれまでのパターンだった。

世界が獲れるかは疑問符がついていた。

 伊藤は目がよく、スピードがあり、国内では全日本新人王、東洋太平洋王座、WBOアジアパシフィック王座を獲得している実力者だ。端正なルックスもあって、期待度は決して低かったわけではない。ただし、世界が獲れるのかといえば、クエスチョンマークが外せないのも事実だった。

 その理由は伊藤のボクシングスタイルによるところが大きい。伊藤はディフェンスのよさが目を引く一方で、自分から積極的に仕掛けていくことがなかなかできない選手だった。言うなれば待ちのボクシングである。

 ここ数試合は世界を見すえ、アグレッシブなスタイルにモデルチェンジしようと試みていたが、それが形になって表れているようには残念ながら見えなかった。

 米国のブックメーカーのオッズも4対1でディアス有利となっていたから、伊藤の「ぶっ倒します」という威勢のいいコメントを、期待と不安の入り混じった心境で聞いたものである。

 ところが―─。

【次ページ】 後楽園の時とはまったく別人。

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