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モドリッチ、泣き顔でのW杯MVP。
誰よりもタフな天才に世界が虜に。

posted2018/07/18 11:30

 
モドリッチ、泣き顔でのW杯MVP。誰よりもタフな天才に世界が虜に。<Number Web> photograph by Getty Images

W杯は勝者以上に印象深い敗者が出るものだ。ロシアでのその立ち位置はモドリッチだった。

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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 無表情のゴールデンボール受賞者も、最近のW杯では恒例になった。

 クロアチアのルカ・モドリッチが4年前のリオネル・メッシと同じように、決勝で敗れた後に大会MVPとして表彰された。

 さらに遡ると、ディエゴ・フォルラン(2010年)、ジネディーヌ・ジダン(2006年)、オリバー・カーン(2002年)、ロナウド(1998年)と6大会連続で、最優秀選手は優勝を逃したチームから選出されている。

 前回は「マーケティングの力学」と勘ぐる人もいた。ファイナル後のセレモニーで賞が授けられることもあり、敗者を慰める意味を推し量る人もいるかもしれない。

 でも今回のモドリッチばかりは、大会を通してクオリティが際立っていた。エデン・アザール、アントワン・グリーズマンが続いて、納得の上位リストが出来上がったと思う(唯一CLとの2冠を果たしたラファエル・バランも捨て難いけれど……)。

壮観なミドルから完璧なパスカットまで。

 モドリッチ、32歳、世界随一の司令塔。リズミカルかつ正確なプレーで観る者を引き込み、驚きを与え、感情を揺さぶる。

 少しミステリアスな風貌のクロアチアの10番は、フットボールの根源的な楽しみを供しながら、玄人好みの動きも完璧にこなす。対峙するタフガイを一瞬だけ振り切って沈めた壮観なミドルから、相手の思惑を完璧に読みきったパスカットまで。

 準決勝を突破して1998年のクロアチア代表を超えたとき、「運だけでここまで勝ち進んできたわけじゃない」と話していたが、決勝ではその運に夢の実現を阻まれたところが大きい。

 まず確実に主導権を握りながら、準決勝の英雄マリオ・マンジュキッチの不運なオウンゴールで先制を許した。すぐにイバン・ペリシッチの見事なボレーで追いついても、その背番号4がボックス内でボールを手に当ててVAR後にPKを宣告される。

 グリーズマンに落ち着いて決められてハーフタイムに突入した時、シュートを1本しか記録していないフランスに、クロアチアは1-2とリードされていた。

【次ページ】 今や多くの人がバロンドールに推すが。

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