Overseas ReportBACK NUMBER
川内優輝、ボストンマラソン優勝!
市民の星から「世界のKAWAUCHI」へ。
posted2018/04/18 17:20
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Keith Bedford/The Boston Globe via Getty Images
路上を叩きつける雨。容赦なく吹きつける向かい風。
35kmを過ぎるとトップを走るジョフリー・キルイ(ケニア)の足がパタッと止まった。それまでのキレのある走りは消え、ジョギングのようなスピードに落ち込んだ。その姿を視界にとらえた川内優輝は、さらに勢いが増し、40kmでキルイを抜き去った。
「後ろを見ず、前だけを見て走った」という川内は、その後もスピードはまったく落ちず、キルイに2分半もの大差をつけてフィニッシュラインを駆け抜けた。
ゴール後はいつも倒れこむ川内もこの日はアドレナリンが全身から出ていたのだろう。信じられないという表情を何度も見せ、倒れこむことはなかった。
表彰式でメダルとトロフィーを受け取り、『君が代』を聞く川内の目には大粒の涙が浮かんだ。
川内にとって、集大成とも言えるレースだった。
悪天候を逆手にレース巧者だった川内。
今レースでは川内のタフな精神面とレース運びの巧みさが目をひいた。
東海岸は春の大寒波に見舞われ、マラソンどころか家から出ることもためらうような最悪の天気。加えてスタート時の気温は5度を下回る寒さ。しかし悪条件、特に寒さを得意とする川内は「寒さが苦手ではないので、チャンスがあると思っていた」と記者会見で話したように、チャンスと捉えていた。
スローペースを嫌う川内は、スタートから飛び出した。
6キロすぎに後続選手に追いつかれたが、その後もペースが落ちるたびに集団をリードする勇敢な走り。
スローペースで進むと、30kmすぎあたりから突然ペースが上がるケースが多い。アフリカ勢にスピードで劣る川内にとっては、スローペースを避けるための作戦だった。