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パラで世界一になって五輪も狙う!
芦田創が目指すスーパーアスリート。
posted2018/03/12 08:00
text by
南しずかShizuka Minami
photograph by
Shizuka Minami
「7mを跳んで『凄い!』って言われてもね」
芦田創は、自身の記録に全く満足していない。
昨年、芦田は走り幅跳び(競技カテゴリ:上肢切断などT47)で、自身の記録を31cm更新する7m15cmの日本新記録を樹立して、昨年度の走り幅跳び(T47)の世界ランク2位まで上り詰めた。
2年後の東京パラリンピックで活躍が期待される中、芦田のモチベーションは別のところにある。
「健常者に負けたくない」と言うのだ。
例えば、現在、日本の男子中学生の最高記録は7m40cmである。芦田はパラアスリートなので、単純に比較することは決して出来ないのだが……。
「スポーツをする上で機能障害があることは絶対不利なんですよ。でも『右腕のせいでパフォーマンスが悪い』とか、障害を言い訳にしたらアカンなと」
ストイックなアスリートらしい言葉だが、芦田が自分の右腕と向き合うようになるまでには時間がかかった。
「腕が健常だったら、もっとタイムも……」
芦田の右肘の骨は、生まれつき脱臼していた。5歳の時に初めて手術をしたが、すぐにまた脱臼してしまい、メスを入れたところから「デスモイド」という腫瘍が出来た。「デスモイド」は良性の腫瘍だが、再発を繰り返し、激しい痛みを伴うため、厄介である。毎年、5歳から15歳まで腫瘍を除去する治療を繰り返すうち、右腕が機能障害になってしまった。
15歳の時に「もう治療の手段がない」と医者から切断を宣告される。「腕があるうちに好きなことをやりたい」と思い、陸上競技を始めたところ、なんと奇跡的に腫瘍の進行が止まった。
好きで始めた陸上だが、進学した早稲田摂陵高校では挫折を味わう。同級生と同じ練習量をこなしても、右左の腕で約2kg違うため体のバランスが崩れやすく、1人だけよく怪我をしたのだ。
「腕が健常だったら、もっとタイムも速いはずなのに……」自分にハンデがあることが悔しくてしょうがなかった。