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“喫煙は?”と選手に聞いた就任時。
反町監督と松本山雅の幸福な7年目。

posted2018/02/24 17:30

 
“喫煙は?”と選手に聞いた就任時。反町監督と松本山雅の幸福な7年目。<Number Web> photograph by Getty Images

その戦術眼で松本に熱狂をもたらす反町監督。今年も群雄割拠のJ2を面白くする存在となる。

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塚越始

塚越始Hajime Tsukakoshi

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Getty Images

 2012年、反町康治が松本山雅FCの新監督に就任した。松本はJFLからJ2に昇格し、反町は湘南ベルマーレの監督を退任した直後のタイミングだった。

 前年のJリーグでは、柏レイソルがリーグ優勝を果たし、サガン鳥栖は初のJ1昇格を決めた。またベガルタ仙台が上位に食い込み、ガンバ大阪の新スタジアム建設が決定する。

 サッカー(球技)専用スタジアムの熱量が、街と人を育んでいく――。

 そんな時代の到来を感じさせるなか、アルウィン(長野県・松本平広域公園総合球技場)を本拠地にする松本は、'11年の観客動員最多1万1956人、また年間平均7461人というJFL新記録を作っていた。

「視界を遮るものがなく、柏より臨場感があるんじゃないか」とリサーチしていた反町は、一旦休息をとってEUROでも観に行くか……と考えていたが、「そんなことしていたら老け込んでしまうということだな」と、松本に引き寄せられるようにオファーを快諾した。

全体練習初日に「煙草を吸いますか?」

 とはいえ、当時の松本は定まった練習場がなく、JFLからの昇格を果たした“恩義”もあり、登録選手数は約40人の大所帯。アマチュア時代の名残があり、いろいろな困難が伴うことはある程度覚悟していた。それでもトレーニングに向かうと、面食らった。

 選手が着用するジャージのメーカーも色もバラバラで、まるで大学生のチームのようだった。クラブがまだプロへと脱皮する最中であることを物語っていた。

 そして全体練習の初日、ミーティングの際に反町は選手全員にアンケート調査をした。その最後の質問に「あなたは煙草を吸いますか?」という項目を設けた。どうやら何人かが喫煙をしているという情報が事前に入っていたそうだ。

 しかし、正直に「はい」と答えたのは1人だけだった。

 後日、反町はその選手を呼び出し、「正直に答えたのはお前だけだったぞ」と伝えた。

「ええぇぇ、マジっすか! 俺だけっっすか!!」

 目を丸くしたその選手の反応で、チーム事情は把握できた。ただ新指揮官は「正直に答えてくれたことに感謝しているし、他に誰が吸っているかなんて詮索もしない。その気持ちは持ち続けてほしいし、俺もそこをチームのために生かしていこうと思う。ただ喫煙は、プロアスリートとしての生活に加え、健康問題にもかかわってくる」と、用意してきたニコチンによって真っ黒になった肺の写真を見せ、いかに害があるかを伝えた。

【次ページ】 ひたむきさが観る者の共感を生む。

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