プロ野球亭日乗BACK NUMBER
筒香嘉智がついに「何とかした」。
普段はポーカーフェイスの男が……。
posted2017/11/03 12:40
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
ヤフオクドームでの1、2戦が終わった時点の正直な感想は、「チームの力が違いすぎる」ということだった。
例えば第1戦、1番の柳田悠岐と桑原将志、2番の今宮健太と柴田竜拓……と両チームの1番から9番までを個々に比べてみても、全てソフトバンクの方が上に見えた。DeNAのファン視点で見ると「せめて4番の筒香嘉智くらいは」と思うのだが、こういう大舞台の4番として何とかする力は、内川聖一の経験に一日の長がある。
ともに1、2戦はそれほど調子がいいようには見えなかった。しかし第2戦、逆転の場面となった7回2死一、二塁からムリに決めにいかず、四球で中村晃の逆転打を呼び込んだ場面などは、内川の「何とかする4番」としての真骨頂だった。
舞台を横浜に移しても、内川が徐々に調子を上げて第3戦では先制打を含む2安打。一方DeNAがようやくシリーズ初白星を挙げた第4戦でも筒香は連続三振を含むノーヒットと、本来の「決める4番」としての勝負強さが影を潜めたままだった。その結果、試合後のレビューで「あとは主砲だけ」と、書かざるを得なかった訳である。
4番の勝負、先に「何とかした」のは内川だった。
そして迎えた第5戦。シリーズはついに4番の勝負になった。
先に「何とかした」のは内川だった。
1回だ。すっかり調子を落としてしまった3番のデスパイネが中飛に倒れた2死二塁。DeNA先発の左腕・石田健大の外角スライダーを逆らわずに右方向に打ち返した。
「何とか流れをこっちに持ってきたかった」
黒星を喫した第4戦で途切れた初回得点を再び呼び戻す、先制の右翼線タイムリー二塁打を放ったのだ。