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武藤嘉紀の考え方は180度変わった。
「今はね、頼むよ呼んでくれと思う」
posted2017/08/29 07:00
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
こちらが圧倒されるくらいのペースで、次々と言葉が出てくる。今、そんな迫力を備えているのが、日本代表に復帰を果たした武藤嘉紀だ。
武藤が最後に代表戦に出場したのは、昨年9月6日のタイ戦。試合最終盤の8分間だけの出場だった。その前の出場となると、'15年11月のシンガポール戦までさかのぼる。
'14年ブラジルW杯のあと、慶應義塾大学の学生として代表デビューをしてすぐに初ゴールを決めたときの喧噪が嘘だったかのように、周囲はずいぶんおとなしくなった。
彼は何を考えているのか。
先日、マインツの練習場を訪れると、精気みなぎる武藤の姿があった。
練習をおえると、グラウンドからロッカーへ戻る途中の坂道の脇にある段差に腰かけた。練習で全てを出し切ったあとだったからだ。しかし、落ち着いてから紡ぎ出すその言葉はパワーにあふれていた。
昔は「強ければいいじゃん!」と思っていた。
パワーの源泉は、苦しんだ時期を乗り越えたという感覚だろう。
2016年の2月に右膝の外側靱帯を痛め、2016年を通してリーグ戦で6試合、ELで2試合、代表戦で1試合、合計9試合しか出場していない。
23歳から24歳にかけて、サッカー選手にとって重要な時期に、わずかな試合しか出場できない苦しい時間を過ごした。
だがあの期間は、武藤は考え方を変えるきっかけになった。
「以前は、一流の選手が『サッカーは、メンタルのスポーツだ』と言うのを聞いても、『何を言っているの。上手ければいいじゃん! 強ければいいじゃん!』と思っていたけど、最近思うのは、まさしくメンタル面が大事なスポーツだなということ」
そこまで話すと、武藤は力をこめた。