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15人全員使う、全打席フルスイング。
弱くても奇想天外な高校は魅力的だ。

posted2017/07/20 17:00

 
15人全員使う、全打席フルスイング。弱くても奇想天外な高校は魅力的だ。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

大らかに最後の夏を楽しむ“普通の高校球児”も目にできる。地方大会の良さは、そこにあるかもしれない。

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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Takuya Sugiyama

 思わず笑ってしまった。

 6月24日のソフトバンクvs.西武でのことだ。

 プロ野球タイの4打席連続本塁打記録が掛かっていたソフトバンク・柳田悠岐の第1打席を固唾をのんで見守っていたが、豪快に空振り三振を喫した。

 プロ野球の世界では、選手が個人記録を狙う行為はとかく批判されがちだが、柳田には明らかなホームラン狙いが見て取れた。何とも心地いいものだった。この環境があるから、パ・リーグはスター選手が育つのだろう。

 一方で、高校野球は夏の甲子園出場を決める地方大会がスタートしている。

 早実の清宮フィーバーは今年も健在だ。そして清宮だけではなく全国各地に存在する数多の逸材候補をメディアは連日、伝えている。

奇想天外なチームがあってもいいんじゃないか。

 昨今の高校野球人気によって世間の注目、そしてスタジアムにも多くの観客を集まるようになった。その傾向はメディアの1人としてもありがたい限りだが、その一方で、高校野球全体が均一化しつつある印象もある。

 もっと奇想天外なチームがあってもいいんじゃないか。強くなくても、ワクワクするようなチームがあってもいいのではないか。

 そんな想いをベースに、筆者は今年の高校野球取材をスタートしている。

 驚いたのは千葉県2回戦、成田国際vs.県柏を観戦した時のことだ。成田国際が次から次へと選手を交代させていたのだ。高校野球では劣勢を挽回したり、勝ちパターンに当てはめるために選手交代を仕掛ける。あるいは大差がついた際の“温情采配”として控え選手を多く出場させるチームもある。

 しかし、成田国際はいずれのパターンにも属さない。

 メンバー全員をいかに戦力として作り上げ、公式戦であっても勝つために多数の選手を起用する方針を貫いていたのだ。

【次ページ】 「基本的には80球くらいが限度かなと考えています」

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