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前田健太を苦しめた「日本スタイル」。
先発復帰のために必要だったこと。

posted2017/06/22 08:00

 
前田健太を苦しめた「日本スタイル」。先発復帰のために必要だったこと。<Number Web> photograph by AFLO

日本では通算28度の完投があったが、メジャー移籍後は0。短い回に全力を注ぐメジャースタイルを身につけたら、マエケンはさらに進化する。

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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AFLO

 6月18日、シンシナティ。

「ウッ!」、「ウッ!」

 1球を投げるごとにマウンドから聞こえてくる雄叫びのような声。直球であっても変化球であっても、その声は3階にある記者席まで聞こえてきた。必死に、懸命に、1球1球、全力で腕を振る前田健太の姿がそこにはあった。

 2週間ぶりに先発の座を与えられたスポットスターターの役回りで5回を3安打、1四球、1失点。78球で5勝目を挙げた前田は試合後に言った。

「どんどんバッターを攻めて行くことができた。直球をしっかり投げることができているし、どの球種も積極的に投げて行くことができた。今日のような気持ちで続けていきたい」

 先発ローテーションの座を与えられながら、10試合に先発して4勝3敗、防御率5.16と不振が続いた前田がブルペンへ配置転換されたのは6月7日のことだった。

 デーブ・ロバーツ監督は「自分の投球を取り戻して欲しい。状態を上げて欲しい」と説明したが、首脳陣には明確な狙いがあった。

4回で92球を要したマエケンに辛辣な言葉が。

 直前、4日のブリュワーズ戦。先発した前田は2安打、2失点ながら4回で4四死球を与え、球数は92。5回を前に下がり、3敗目を喫した。試合後の指揮官は辛辣だった。

「毎回あれだけの球数(30、23、23、16)を投げ、イニングを乗り切るのがやっと。92球も投げていたのでは5回のマウンドには送り出せない。無駄球が多く、打者を恐れているような投球も多々あった。我々も共に一緒になり考えていくが、ケンタ自身で改善しなければならない」

 この日の前田は、決して制球が悪いわけではなかった。打者18人に対し、投手有利なカウントに持ち込んだのは15人。しかしそこから球数がかさみ、決められない。首脳陣の目には「無駄球」、「打者を恐れているような投球」に映った。

 それ以前も似たようなマウンドが続いていた。5月25日のカージナルス戦は5回3失点で勝ち投手も初回に30球を要し3点を失った。30日も再びカージナルス相手に先発し、4回3失点。初回に36球を投じ、3点を失った。

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