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ボクシングの1敗は重いはずが……。
黒星をプラスにした村田諒太の夢。

posted2017/06/12 17:00

 
ボクシングの1敗は重いはずが……。黒星をプラスにした村田諒太の夢。<Number Web> photograph by Kyodo News

1年に数試合しか組めないボクサーにとって、1敗は重い。しかし村田諒太はどこまでも楽しそうなのだ。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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 5月20日に行われたWBA世界ミドル級王座決定戦で敗れた村田諒太(帝拳)が6月8日、記者会見を開いて現役続行を表明した。村田が1-2の判定でアッサン・エンダム(フランス)に敗れた試合は、直後から判定内容が物議を醸し、WBAがジャッジ2人をサスペンド処分にするなど、騒がしい状況が続いていた。

 騒動が落ちつき、あらためて記者会見を開いて再び世界を目指すと宣言した村田。ロンドン五輪金メダリストは初の世界戦で何を手に入れ、今後、我々にどのような姿を見せてくれるのだろうか。

 8日、帝拳ジムに姿を現し、トレーニングを披露した村田はとても充実した雰囲気を発散していた。試合後、いくつか出演したテレビ番組で、ボクシングへの熱い気持ちを口にしており、現役続行宣言はもはやニュースではなかったかもしれない。むしろこの日は、その生き生きとした表情、何より世界挑戦直前とは見違えるような躍動感のある動きが、何度も村田を見る人間にとってはニュースだった。

 村田は練習後「ずいぶん楽しそうに見えたけど?」という質問に次のように答えた。

「アスリートあるあるかもしれませんけど、試合前になると緊張感とかで練習を楽しむのは難しくなります。試合が終わってからの練習は、自分のやりたいこと、好きなことをやれるので、ボクシングが楽しい時期です。どうせまた厳しい時期が来ますから」

プロ初黒星の選手には全く見えない姿。

 五輪金メダリストが迎えた初の世界タイトルマッチは、近年のボクシング世界戦の中でも抜群に注目度が高く、メディアの取材は連日続き、五輪決勝の舞台を踏み、デビューから注目されていた村田といえども、極度の緊張とストレスを強いられたことだろう。

 そこから解放されたのだから気は楽にしても、村田が全身から醸し出すムードは、ただ緊張から解放されたという理由だけでは説明しきれない。ましてやプロ初黒星を喫した選手が、これだけはつらつとしている姿は記憶にない。

 ボクシングの1敗は大きいと言われる。無敗レコードはボクサーの商品価値を高め、初黒星は時に「メッキがはがれた」という見方すらされる。たった1つの敗北でファンの信用を一気に失い、それまで積み上げてきたボクシングが嘘のように崩れてしまう選手もいる。

【次ページ】 村田の1敗は、最終的な収支はむしろプラス?

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