「夢のような夢」をもう一度追いかけるために。

　参謀役の田中繊大トレーナーは次のように村田の今後を表現した。

「自分からすると村田は本当に強いんです。世界タイトルを獲れなかったのは、セコンドのほうが勝ちを確信してしまい、それが村田に伝わってしまったところがある。今までの村田は迷いがあったと思うんですけど、この試合で吹っ切れたと思う。これからは確実に今まで以上の村田を見せられると思います」

　WBAからはエンダムとダイレクトリマッチを許可する旨が明らかにされているが、帝拳の浜田剛史代表によると、今後のプランは今のところ白紙だという。

　状況は流動的だ。それでも村田の心は一点の曇りもない。

「僕の人生ノートというのがあって、夢のような夢というところに『ラスベガスでビッグマッチをしたい』と書いていた。それがいつの間にか、挑戦することではなくて現実としてとらえられるものばかり見ていた自分がいた。そうじゃなくて、夢のような夢だったものが、今回の試合で世界的な評価も少しは得られましたので、少しは近づいたのかなと。だから夢のような夢、あらためてそこを目指したいなと思っています」

　金メダリストとしての重圧と戦い、世界トップ選手と拳を交え、敗北も経験した。もう何も恐れることはない。日本が世界に誇るミドル級、村田諒太がプロボクサーとして本当の姿を見せるのはこれからである。