野球のぼせもんBACK NUMBER
最多勝争う東浜巨と「工藤塾」。
毎日の筋肉痛で取り戻した快速球。
posted2017/06/06 12:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
ヤフオクドームの円形状の屋根は最大120度開く。
日本の野球場で唯一の開閉式との特性を生かして、ホークスは交流戦開幕カードとなったドラゴンズ3連戦を「ルーフオープンシリーズ」と銘打って開催した。ヤフオクドームはマリーンズの本拠地であるZOZOマリンスタジアムと同様、海に隣接するロケーションだ。公式球団歌「いざゆけ若鷹軍団」の歌い出しにもあるように、玄界灘の潮風がグラウンドに舞い込む。
投手はこの潮風を歓迎する。
「風のおかげで打球が飛ばない。その環境で初めて投げたけど、完璧に持って行かれたと思った打球が2本とも(外野スタンド前方の)テラス席でしたから。あ、でもホームランを打たれたことには変わりないですけど(笑)」
その声の主は東浜巨だ。連戦初戦の5月30日に先発した試合後のコメントである。
チームキャプテンの内川聖一が「普段はなかなかニコリとしない」と評するクールな右腕が、この日は口も滑らかに今年一番の笑顔を浮かべてみせた。
ビシエド、ゲレーロ相手にストレートで三振狙い。
本塁打2発こそ許したが、いずれもソロでそれ以外の失点は許さなかった。味方打線が初回から大量6点を奪うなど強力援護もあり10対2の圧勝。東浜は見事に完投勝利を成し遂げたのだった。
得点差はあったが、見応え十分のシーンが8回表のマウンドだった。
1死満塁のピンチを背負った東浜は、球数が110球を超え、両方の肩を揺らしながら息を整えるほど疲れていた。
ここで立て続けに迎えるのはドラゴンズの4番ビシエドと5番ゲレーロの助っ人コンビである。
ここからが素晴らしかった。
「三振を狙いにいきました」
勝負球はいずれもストレートだ。