沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
直線の明暗を分けた隙間のない壁。
安田記念制したサトノアラジンの幸運。
posted2017/06/05 11:30
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
好メンバーが揃った春のマイル王決定戦、第67回安田記念(6月4日、東京芝1600m、3歳以上GI)を制したのは、川田将雅が騎乗した7番人気のサトノアラジン(牡6歳、父ディープインパクト、栗東・池江泰寿厩舎)だった。史上初の4週連続JRA・GI制覇がかかっていたクリストフ・ルメールのイスラボニータは8着に敗れた。
勝敗を分けたのは、パンパンの良馬場だった。
昨年このレースを逃げ切ったロゴタイプが今年もハナを切り、前半800m通過は45秒5というよどみない流れになった。逃げ・先行馬にとって厳しいハイペースをつくりながら、後半800mを46秒0-34秒4でまとめ、ゴール直前まで連覇達成かと思わせたロゴタイプも強かったが、それをサトノアラジンがラスト3ハロン33秒5の末脚で差し切った。
勝ちタイムは、レコードにコンマ2秒届かないだけの1分31秒5というスピード決着だった。
普通これだけ流れが速くなると、直線ではバテて下がったりヨレたりする馬と、へこたれずに伸びる馬とが混在するため、馬群がバラけやすくなるものだ。ところが、このレースでは、ラスト200m地点でもほとんどの先行馬が余力を残しており、一流騎手が揃っていたこともあって、みな真っ直ぐ走っていた。
イスラもエアも、前が塞がってしまっては……。
中団以降の馬にとっては、前方を、横長で隙間のない馬群の壁に塞がれた状態がしばらくつづく、苦しい展開になった。
壁に阻まれた馬たちのなかにイスラボニータがいた。抜群の手応えで直線に向きながらも進路を確保できず、脚を余して8着に終わった。「馬はとても元気で、いいポジションだったが、進路がなかった。ラスト150mだけスペースがあったけど、遅すぎた。残念」とルメール。
2番人気に支持された、武豊のエアスピネルも、直線でなかなか前があかず、イスラボニータとほぼ同じタイミングでようやく目一杯追えるようになったが、コンマ2秒差の5着止まりだった。武は「4コーナーでレッドファルクスに前に入られたのが痛かった。最後はすごい勢いだっただけに、あのワンプレーだけが……」と悔しそうに語った。
エアより先にいいポジションを確保したミルコ・デムーロのレッドファルクスも、馬群の壁の後ろで5、6頭ぶん外に持ち出してようやく進路を確保し、前を追ったが3着までだった。「直線、前があかなかったので、我慢して外に出したらすごく伸びた。でも、サトノには届かなかった」とデムーロ。