オリンピックへの道BACK NUMBER
五輪前年に調整法を変えない勇気。
渡部暁斗、竹内智香が得た経験値。
posted2017/05/31 08:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
5月18日、東京・八芳園で「SAJ SNOW AWARD 2017」が開催された。全日本スキー連盟がそのシーズンに活躍した選手、スキーの発展に貢献した関係者を表彰する式で、1回目の開催だ。
式には選手、コーチ、関係者など約450名が参加した。第1回目の最優秀選手賞はワールドカップで2シーズン連続総合優勝を果たしたジャンプの高梨沙羅が受賞。優秀選手賞は、同じくジャンプの葛西紀明、伊藤有希、ノルディックコンバインドの渡部暁斗、スノーボード・アルペンの竹内智香らが選ばれた。
また将来の活躍が期待される「NEXT HERO賞」はモーグルの世界選手権で日本男子初の2冠に輝いた堀島行真が選ばれた。プレゼンターとして、里谷多英と上村愛子がしばしば壇上に登場した。
五輪に向けて、新たな挑戦より1つ1つの積み重ねを。
式のあと、選手たちは取材に対応した。その中には、今シーズンから来シーズンにかけての取り組みについての質問があった。その意図はオリンピックを控える前年ということもあって、何か新しい取り組みを試みるのかを知ることにあった。
その質問に対して、竹内と渡部はそれぞれこう答えた。
「これからの9カ月、10カ月というのは、新しいことに取り組んだり何か開拓をするというよりは今までトライしてきたものから1つ1つ選んでいく作業になると思っています」(竹内)
「たくさんのことに目移りしないように。新たなことにチャレンジしていくシーズンではないと思っています」(渡部)
竹内は計4度のオリンピック出場経験があり、ソチ五輪で2位に入って悲願のメダルを獲得した。一方の渡部は3度出場、竹内と同じくソチで銀メダルを手にしている。
キャリア的には何度も世界の壁に跳ね返されて、その末にメダルを得たという点が共通するが、面白いことに両者ともに異口同音の答えをしたのだ。そこには、経験に裏打ちされた実感が込められていた。