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負けても再び立ち上がる村田諒太。
哲学者・岸見一郎への告白。

posted2017/05/26 11:00

 
負けても再び立ち上がる村田諒太。哲学者・岸見一郎への告白。<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

取材をした時の哲学者・岸見一郎(左)と村田諒太。まったく異なるジャンル、30歳の年の差を感じさせない明るく爽やかな対談だった。

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Tadashi Shirasawa

 初の世界タイトル戦はダウンを奪いながら、不可解なジャッジによる判定負け。国内外で議論が巻き起こった。ただ、その中で当の村田は清々しく微笑んでいる。
 なぜか。
「評価するのは他者ですから。アドラーが言うように他者をコントロールすることはできない。課題の分離ですよ」
 その言葉の答えは4月13日に発売されたNumber925号「嫌われる勇気」で実現したアドラー心理学をめぐる哲学者との対談にあった。静かで強い村田の胸の内を探るべく、全文を再録する。

村田「今日はお会いできるのを楽しみにしていました。僕は昨年までアドラー心理学って何か流行りもののように思って、流行に手を出したくないという精神から敬遠していたんです(笑)。でもテレビで岸見先生をお見かけしたのをきっかけに興味を持って、ご著書を読ませていただきました」

岸見「ありがとうございます。村田さんはお父様に本だけは読みなさい、と言われて育ったと聞きました」

村田「父は通勤時間にニーチェだとか哲学書を読んでいる、言ってしまえば変わった人で(笑)。僕もそんなに読んでいるわけではありませんが、父に勧められるのと、やはりボクシングを通して本を読むきっかけができるんです」

岸見「それはどういうことですか」

村田「こういう競技なので、どうしても怖くなることがある。そういうときに本が助けになるんです。ご著書にあるように、もし自分がこの世に1人なら悩みなんてないですよね。これはスポーツ心理に通じる部分があって、プロやオリンピックで人に見られる競技をしていると、対戦相手より、結果を受けた周りの反応に緊張するんです」

岸見「他者が自分をどう見ているかが気になるのですね」

村田「たとえ相手がマイク・タイソンだって、1対1で殴り合うこと自体は僕は怖くないんです。でも、結果によって他者の中での僕という存在、よく言うアイデンティティを失うことに恐怖がある。実際にはそれは幻のような恐怖だとご著書でわかって、僕は凄くそれに助けられました」

【次ページ】 「戦っているのが対戦相手ではなく、世間になった」

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