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「会長、次、統一戦にして下さい!」
拳闘界、異端の世界王者・田中恒成。
posted2017/05/25 07:00
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Kyodo News
村田諒太へのジャッジにブーイングが渦巻いた5月20日、東京から西へ約300km。名古屋の地でボクシング界の隠れた怪物が咆哮していた。
WBO世界ライトフライ級タイトルマッチ。
2階級制覇の王者・田中恒成(21=畑中ジム)の相手は同級1位アンヘル・アコスタだった。
WBO本部のあるプエルトリコ政府がその才能をバックアップし、デビューから16戦全勝16KO。田中はそんな最強の指名挑戦者と壮絶な打ち合いの末、ダウンを奪い、3-0の判定で初防衛を果たした。
鋭利なパンチとテクニックで相手のハートを削っていくような戦いぶりもそうだが、彼の貪欲なパーソナリティーが分かりやすく発露したのは激闘の後だった。
リング上でインタビューを受けた田中はアナウンサーのマイクを奪うと、放送席にいた同じ階級のWBA王者・田口良一(30=ワタナベ)に向けて、こう言ったのだ。
「田口選手、良かったらリング上にお願いします! すいません、解説なのに呼び出してしまって。先輩なのに失礼します。あの……今年中に僕とやりましょう!」
「会長、次、統一戦にして下さい!」
いきなり統一戦の挑戦状をたたきつけたこのマイクパフォーマンスに会場は盛り上がった。今夏に6度目の防衛戦が予定されている田口は驚きながらも返答した。
「次の試合に勝って、是非とも田中くんとやりたいです」
気を良くした田中はさらに続ける。
「はい、皆さん。これで終わりじゃないですよ~。今から畑中(清詞)会長を説得しようと思います! 会長、難しい交渉になるとは思うんですけど、次、統一戦にして下さい!」