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内田篤人「パパがんばらなくちゃな」
復帰、控え、子供……激動の1年間。
posted2017/05/26 08:00
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph by
AFLO
徐々にではあるが手応えは得た。自信だってある。
だが、評価がどうしてもついてこない。そんな状況で内田篤人の'16-'17シーズンは終わった。プレーすらできなかった昨年までと違い、3月下旬以降は90分の出場も問題なくこなせる状態にまで戻っていた。
なのに、チャンスがこない。リハビリ中とはまた違う、自分だけではどうにも出来ないストレスを、どうにか内田はやり過ごした。並の選手だったら、普通の人だったら、そんな状況にどれほどの期間耐えられただろうか。
本人の「高校上がりですから」という強靭なメンタルは大前提として、沈みかける気持ちを支えたのは、まぎれもなく家族の存在だった。
家族をドイツに呼び寄せた2月、内田はそれまで伸ばしていたあごヒゲを剃った。「子供が来るからさ、ヒゲ剃っとけって奥さんに言われて」というのが理由だそうだ。だが突然ヒゲがなくなり、つるっと若返った印象の内田は、家族の来独と共に気合を入れ直したようにも見えた。
当時シャルケはELを戦っている最中で、ギリシャのPAOKテッサロニキ戦のホームアンドアウェイ2試合があった。もちろんメンバー入りすることを念頭に家族の来独の日程を組んだ。だが、出場はおろかメンバー入りさえ叶わなかった。
みんなと一緒に練習することが目標だった1月。
今シーズン後半戦の内田は、そんな風に小さな目標を少しずつ設定しながら、復帰を目指してきた。昨年12月にアウェイのELザルツブルク戦で復帰を果たしており、次の目標は公式戦はホームのリーグ戦で復帰することだった。細かなステップもたくさんあったわけだ。
まず1月は、スペイン・アリカンテでのキャンプに同行した。このキャンプでの目標は「ずっとみんなと行動を共にすること」。つまり、痛い箇所がでて別メニューや治療に移行するわけではなく、この手の1週間ほどのキャンプで比重が大きいフィジカルトレーニングや、試合形式も全てこなすことができた。
最終的には練習試合にも45分出場し、ひいき目なしに存在感を見せた。シャルケの番記者たちには、ドイツ語でのインタビューに応じた。英語でもいいから必要そうだったら通訳をとクラブ広報から頼まれていたのだが、その必要は全くなかった。内田を取材するドイツ人たちの嬉しそうな様子は決して、社交辞令ではなかったはずだ。