フラットだった感情を少し跳ね上げた瞬間。

　一時は首位に並びながら18番でボギーを喫し、悔しい上がり方になった2日目。

　それでも4つのバーディーを奪い取り、首位と1打差の3位は、傍から見れば好位置で決勝を迎えたと思える出来栄えだ。だが、フェアウェイからの第2打がグリーンに届かず、バンカーに落として喫した最後のボギーの悔しさが込み上げていた松山は「もう少しいいゴルフができるんじゃないか」と、フラットに保っていた感情線をちょっぴり上に跳ねあげた。

　それでも、なんとか気を取り直し、自戒の言葉とも思えるこんなフレーズを口にした。

「この2日間同様、フツウにやっていれば、自ずとチャンスは増えると思うので、（決勝2日間は）無理することなくフツウにやれたらいい」

　このときはまだ「フツウ」の意味が漠然としていた。だが、スコアを3つ伸ばしながらも首位との差が1打から4打へ広がってしまった3日目になって、ようやく「フツウ」の輪郭が見えてきた。

　アイアンショットの感触が良くなった一方で、この日は「そのぶんティショットとパッティングが悪くなった」。見事に6バーディーを奪った一方で、サボテン群や池、バンカーにつかまり、3ボギーを喫した。

大事な場面こそ、躍起になってはいけない。

　スコアを伸ばすも落とすも、すべては自分自身。ゴルフはミスのゲームゆえ、ミスをゼロにすることは奇跡に近い。勝つためにはスコアを伸ばしたい。だが、スコアを伸ばそう伸ばそうと躍起になってリスキーなプレーをすればするほど、そのしっぺ返しのようなミスが増えていく。

「まだチャンスはある。しっかり伸ばしていかないと勝てない位置。ビッグスコアが必要になる。ミスを減らせば、自ずとチャンスは増えると思う」

　特別な大会、大事な場面こそ、躍起になってはいけない。特別なことをしようとしてはいけない。拠り所となる我が技術に自信が持てていれば、心を必死に尖らせずとも好打が得られる。

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