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「僕、毎試合投げ方が違うんですよ」
武田翔太の投球の核は“ケツをポン”。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byKyodo News

posted2016/12/22 11:30

「僕、毎試合投げ方が違うんですよ」武田翔太の投球の核は“ケツをポン”。<Number Web> photograph by Kyodo News

プロ6年目にして年俸1億2千万円(推定)と大台を越えた武田。来年は投球回数200イニングを目指す!

ついに、完成形に近づいたコンディショニング。

 '14年まで肩が万全でなかったことは、武田にとってあるいは不幸中の幸いだったのかもしれない。

 人体やメカニズムを学んでいくうちに、自分にとって理想的な肩の上げ方である「ゼロポジション」の構築に専念するようになった。なにより、肩の故障を防ぐためには、肩回りのインナーマッスルの強化は不可欠。特に、体の裏側に位置する棘下筋のトレーニングは細心の注意を払いながら行った。

 棘下筋の厚さ、収縮率、細胞の水分量などを詳細にグラフ化し2日に一度確認する。そこで武田が導き出した答えが、「チューブトレーニングは、棘下筋の収縮率は上がるが厚みが出ない。ダンベルでのトレーニングだと、厚みは増すが収縮率が落ちる」だった。

 '15年に初の2けた勝利となる13勝を挙げた。それでもなお、武田は今年、チューブとダンベルのトレーニングを半年ずつに分けて行うなど、故障しない肩を作るためのトレーニングに精を出した。その結果、棘下筋の厚みと収縮率が高まり、自分にとって理想のゼロポジションの構築にも成功した。武田は言う。

「投げすぎて肩をやりましたからね。だから、今はブルペンでも30球から50球くらいしか投げていないし。球数を考えながら肩も鍛えていくというか、その両立が大切なんです。そこができて、初めてコンディショニングができる。『これをやっておけばいい』じゃなくて、いつも自分の感覚とデータが一致するかどうか常に知っておかないと、僕の場合はよろしくないんですよね」

 今の武田の状態は、現時点の完成形に限りなく近づいたのかもしれない。「もしかしたら来年、すごい成績を残すんじゃないか?」。そう水を向けると、武田はいつも見せる愛嬌たっぷりの笑みを浮かべて言った。

「それはまだわかんないですよ。それが全てじゃないし、ただ『怪我をしにくくなる』ってだけなんで。やっと、プロとして1年間戦える肩の状態になっただけですから」

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