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史上初2年連続トリプルスリーに光を。
山田哲人、成功率9割超の積極盗塁。
posted2016/11/02 11:30
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Nanae Suzuki
史上初の大記録であるわりに、世間でさほど話題になっていないように感じる。
2016年、山田哲人は2年連続のトリプルスリーを達成した。
昨季はセ・リーグを制しながら今季5位に沈んだスワローズのチーム状況も、山田の偉業への注目度を弱くさせてしまっている面はあるかもしれない。だが、柳田悠岐とともに達成した昨季のトリプルスリー自体、13年ぶりという稀有な成績だったのだ。それを2年連続で達成したのだから、プロ野球史上、最高の総合力を備えた打者であることを証明したといっても過言ではない。
CS、日本シリーズの盛り上がりのなかで忘れられがちだが、今季の山田はセ・リーグ盗塁王のタイトルも2年連続で獲得した(30盗塁)。38本塁打、102打点は筒香嘉智に次いでリーグ2位。102得点、97四球はリーグトップだった。
松井稼頭央との対談の中で触れられた走塁への積極性。
そんな山田の万能性は、選手視点から見るとどのように映るのか。2002年に打率.332、36本塁打、33盗塁をマークし、昨季まで“最後のトリプルスリー達成者”だった松井稼頭央と山田との対談がNHK「サンデースポーツ」で放送されていた。
17歳も年の離れた2人は打撃論やメジャーへの思い、結婚観などについて語り合っていたが、そのなかで特に興味深かったのは山田の走塁に対する意識だった。
「大事にしてるのは準備。常に僕は、いくっていう姿勢です。いつでもスタートいけるぞ、いけるぞっていう姿勢で」
そう語った山田はおもむろに立ち上がり、実際にリードをとっている時の姿勢をやって見せた。体重を常に進塁方向に傾ける山田の姿に、松井はただ驚くばかりだった。
松井はトリプルスリーを達成した翌年、3割、30本塁打こそ2年連続で到達したが、盗塁は33個から13個へと大幅に減らしてしまった。そうした自身の経験からも、山田の体勢に表れる積極性に衝撃を受けたのだろう。