プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
オカダ・カズチカ「ひらめき」の勝利。
1.4東京ドームは、オメガとの心理戦へ。
posted2016/10/17 08:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
オカダ・カズチカは丸藤正道との28分にわたる戦いで、まさかのエメラルドフロウジョンを繰り出した。
勝利者インタビューで、オカダはそのエメラルドフロウジョンに触れられると、ちょっと言葉に詰まった。セコンドについていた外道が「ひらめきだな」と助け船を出した。
10月10日。新日本プロレス。超満員の両国国技館。
IWGPヘビー級王者オカダは丸藤のチョップ、ヒザや不知火に苦しんだが、2発目の不知火を切り返すとレインメイカー。そして、ツームストーン・パイルドライバーのように丸藤をかかえた。
さらに、抱え直して、エメラルドフロウジョンをさく裂させた。
この「三沢フィニッシュ」には国技館の観衆からどよめきが起きた。とどめはしっかりと2発目のレインメイカーを叩き込んだ。
これで、オカダは2017年1月4日の東京ドーム大会のメインに王者として立つことが決まった。相手はセミファイナルで後藤洋央紀を倒したケニー・オメガだ。
翌日、テレビ朝日での記者会見に臨んだ2人のやり取りは、心理戦となった。
オメガとオカダの「言葉」によるバトルの中身は?
例によってオメガはここまで来るのにどれだけ大変だったか、日本にきて9年という苦労話を、マイペースで自分の言葉に酔うように、英語で続けた。
オカダをねたむように「オカダ、お前は、高級車だって、かっこいい服だって、ほしいだけの金だって持ち、新日本に好待遇されている。日本じゃあ、苦労も飢えも感じずにいるのだろう。だが、オレは逆だ。(中略)でもな、お前だって、アメリカにいたときには飢えていたはずだし、苦労しただろう」と言い放った。
オカダは2010年から約2年間アメリカTNAマットで修行して、2012年の1.4東京ドーム大会に合わせて帰国。その1カ月後、2月12日には大阪で棚橋弘至を倒してIWGP王者になっている。
「今まで苦労したことがない」とオカダは軽くかわした。
「ケニーが苦労させてくれるなら……それを味わわせてくれるなら、苦労を糧にもっと強いレスラーになりたいと思う」