ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
山中慎介の左ストレートは今も輝く。
目指すは具志堅超えか、統一戦か。
posted2016/09/21 11:40
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Tsutomu Takasu
WBC世界バンタム級チャンピオンの山中慎介(帝拳)が16日、エディオンアリーナ大阪で指名挑戦者のアンセルモ・モレノ(パナマ)を7回1分9秒TKOで下し、防衛のテープを11に伸ばした。
両者は昨年9月に対戦し、山中が2-1判定勝ちを収めたが、スコアは2人が115-113で山中、残りが115-113でモレノというどちらに転んでもおかしくない試合だった。“完全決着”に挑んだ山中はどのようにして会心の勝利を手に入れたのだろうか。
山中vs.モレノ第2戦の見立ては、第1戦と同じようにモレノの卓越したディフェンス技術に山中が手を焼き、“神の左”はなかなか炸裂しない─―というものだった。
そんなイメージを漠然と抱いていたのは、偏屈なライターだけではなかったのではないだろうか……。
モレノが詰めてきた距離は、山中にとっても倒せる距離。
しかし、試合は予想に反し初回から激しく動いた。先に勝利への強烈な意欲をリング上で表現したのはモレノだった。かつてWBA王座を12度防衛した実力者は、前回よりも距離を詰め、左を叩き込んで赤コーナーを慌てさせる。コンビネーションも容赦なく浴びせ、いきなり先制点を挙げる形となった。
「前回は複雑な試合展開になってしまったが、今回は明確に勝つためにラウンドごとに勝利を印象付ける。そのためにはパンチをたくさん打つことが必要だ」
公開練習で語っていた通り、モレノはアグレッシブに攻めた。いきなり先制パンチを食らった山中だったが、決してひるんだわけではなく、「距離が近いな」と感じていた。モレノがリスクを冒して前に出てきているということは、倒される危険性が高いと同時に、自らの左が火を噴くチャンスも広がることを意味する。
ラウンド後半、前がかりのモレノに山中が左を打ち込む。これがカウンターとなって決まると、パナマ人は尻からダウンした。完全決着を求める両雄の強い決意が、第1戦とは打って変わったスリリングな展開を生み出した。