ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
「日本のために遼とゴルフをしたい」
松山英樹が直に口説いたW杯出場。
posted2016/09/09 11:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
AFLO
世間の関心の多くが南米に注がれていた8月、都内某所。ふたりは人知れず、顔を合わせていた。
松山英樹と石川遼。
ともに米国ツアーで戦う同い年の同志。今年2月、石川が腰の故障で長期離脱を強いられたため、最後に会ってから既に半年以上が経過していた。リオデジャネイロからオリンピックの興奮が訪れた夏の日のことだった。
声をかけたのは松山である。
11月に豪州で行われるワールドカップ。28の各国・地域から2人ずつで争われる国際大会は、今年で3年ぶりの開催となる。代表選手の決定方法は、8月1日付の世界ランキングで各国最上位の選手に出場権が付与され(辞退の場合は次点の選手に繰り下がり)、エントリーした選手がパートナーを選ぶというもの。
世界ランクで日本勢の最高位に君臨する松山が、一番に指名したのが石川だった。
ふたりの仲は、少しずつ縮まってきた。
ともにアマチュア時代に日本ツアーで優勝し、賞金王のタイトルを獲得。日本ツアーで「史上最年少」「史上最速」といった類の記録は、ほぼ彼らの名前で占められている。戦いの場を移した米国ではいまや、松山が石川を圧倒しているが、実績とは一線を画したところで、ふたりの仲が少しずつ縮まってきたのも事実だ。
フロリダ州にある互いの拠点も、自動車ですぐに行き来できる距離にある。馴れ合いではない「付かず離れず」というフレーズが彼らの関係性には合うが、スマートフォンでメッセージをやり取りする間柄でもあり、今回の一件もそれで済ませてもよかった。ただ、夏場に一時帰国していた松山は、かねて送っていたオファーを改めて伝えるため、石川と直接会うことを望んだ。
「“LINE”もしてましたけどね。でも会った方がいいかなって。1月からかな……しばらく会ってなかったですしね。『結婚おめでとう』とも直接は言っていなかったから(笑)」