野球善哉BACK NUMBER
北海はなぜガッツポーズしないのか。
甲子園では珍しいスタイルの「理由」。
posted2016/08/19 17:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
そつのない攻撃では決してなかった。ミスも少なくなかった。それでも、彼らは負けなかった。
北海(南北海道)が88年ぶりの甲子園ベスト4進出を果たした。彼らの戦いぶりで際立っていたのは、常にどんな時も冷静な精神状態を保つということだった。どんな試合展開になっても、試合をものにしていく強さがある。
エースでキャプテンを務める大西健斗は、こう語る。
「一喜一憂しないでプレーすること。そうすることで、試合中の物事を冷静に見られたり、プレーにつながっていると思う」
準々決勝の聖光学院(福島)戦は、初回に守備のミスから3点を失う苦しい展開だった。しかし直後に2点を返すと、じりじりと相手を追い詰めていく。流れが悪くなりそうなプレーがあっても落胆せず、目の前で起きるプレーを冷静沈着にこなしていく。そうやって、次第に流れを引き寄せていく。
ミスはある。しかし気がつくと試合をものにしている。
4回表、先頭の7番・下方忠嗣が右翼前安打で出塁、続く8番・大西の犠打が失敗に終わるも、9番・鈴木大和がバント内野安打でチャンスを広げると、2死から菅野伸樹、佐藤佑樹の連続適時打で逆転に成功する。
5回表には5番・川村友斗の2試合連続本塁打に加え、2つの四球で得た好機に9番・鈴木が絶妙なセーフティスクイズを成功させた。8回表には、1死一塁から佐藤大が投ゴロ、投手からのボールを遊撃手が落球したようにも見えたが、判定はアウト。抗議もあって嫌な空気が流れたが、次打者・川村が初球をたたいて右中間への適時二塁打で1点を追加した。
守備では、1回に右打者がスライダー、左打者にストレートと狙い球を絞られて失点したが、回を追うごとに配球の幅を広げて打ち取っていった。9回裏迎えた1死満塁のピンチも、併殺打に切って試合を締めた。
ミスや流れを悪くしかねないプレーがあるのだが、気が付くと試合をものにしている。北海の今大会の戦いぶりを振り返ると、そんな試合ばかりだ。