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“桃田の代役”を越えて戦った34歳。
バド佐々木翔、リオで競技人生に幕。

posted2016/08/15 13:10

 
“桃田の代役”を越えて戦った34歳。バド佐々木翔、リオで競技人生に幕。<Number Web> photograph by Getty Images

最後となった試合の前に、「コートで成仏したい」と全身全霊をかけた思いを口にしていた佐々木。その強い思いは後進の選手たちに届いたはず。

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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「何もしゃべれないですね」

 試合後、ミックスゾーンに来ると涙が止まらなくなった。

 バドミントン男子シングルス1次リーグ。ラジフ・オーセフ(英国)に敗れて敗退した佐々木翔は、しばし涙を流した後、「ただ、やってきたことに対しては悔いはないです」ときっぱりと言った。まっすぐな人柄が涙とともに、にじみ出ていた。

 世界ランキング15位のオーセフとの試合は、佐々木にとって厳しい展開となった。第1ゲームは2-0と幸先良くスタートしたかに見えたが、それもつかの間。5連続得点を許して相手のペースに持って行かれた。一時は6-12から13-12と逆転したものの、そこから再び5連続失点。終盤に突き放され、15-21で落とした。

 第2ゲームはスタートから一方的に押されて6連続失点。最後までリズムをつかむことができず、9-21で落とし、ストレート負けを喫した。

「相手が強かった。こっちは足でかき回したかったのですが、その前に相手の強打で押されてしまった」

ロンドン五輪に続く出場は別の意味で注目を集めた。

 主導権を終始握られたのは、「きのうの初戦は自分としても緊張していた。その分、思ったより疲労が多かった」ことによって、思うように足が動かなかったからだ。

「今日は最後の一歩が行けないまま、パワーで押し切ろうと思ってネットに引っかける場面が多かった。理想としては、最後の一歩まで身体を入れて、逆に力を抜いて打って次に回したかった。やはり、パワー勝負になってしまうと相手が有利になる。そこが差の開いてしまった大きな要因かなと思う」

 ロンドン五輪に続く2度目の出場だが、当初は五輪出場を決めるランキングレースで結果が出ず、リオ五輪出場は厳しい状況となっていた。

「五輪がダメなら引退」との思いで過ごしていた4月上旬。男子シングルスの日本選手トップを走っていた桃田賢斗の不祥事が発覚した。佐々木は、桃田に代わる繰り上がり出場ということで、別の角度からの注目を浴びることになった。

【次ページ】 「桃田の代役は自分しかいないと思った」

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