バレーボールPRESSBACK NUMBER
栗原恵は今もコートに立っている。
変わらぬ可憐な笑顔と、新たな役割。
posted2016/07/30 07:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
AFLO
7月1日から3日まで、石川県金沢市のいしかわ総合スポーツセンターでバレーボールのV・サマーリーグが行われた。毎年、若手が主役となる夏場のこの大会に、今年は31歳の栗原恵(日立)の姿があった。
当初は出場する予定ではなかったが、「怪我人が出たので、急きょ出ることになったんです」と苦笑した。
この大会に限らず、女子バレー界全体を見渡しても、栗原と同年代の選手は少なくなった。今シーズン、V・プレミアリーグでプレーする同級生は、リオデジャネイロ五輪メンバーで、今季トヨタ車体に所属する荒木絵里香だけだ。
「ほんとに、寂しいんですよね」と栗原はつぶやく。
日本の女子バレー選手は、ほとんどが20代のうちに現役を引退してしまう。怪我などの事情でやむを得なくユニフォームを脱ぐ選手もいれば、「まだまだできるのに」と周囲が惜しむ中、若くして引退する選手もいる。
そんな中、プロ選手として、幾度も大きな怪我に見舞われながら、30代に入った今も栗原が現役を続ける原動力となっているものは何だろうか。
今やめるのは、バレーをやりたかった自分に失礼。
「うーん、何なんでしょうね……。私は結構長く現役をやってきたんですけど、リハビリなどでプレーできない期間も多かったんです。その間、バレーをやりたいのにできないという思いがあって、それを越えて今がある。だから今、痛みがなく体の状態がいいという中で辞めるという選択肢を選ぶのは、その時の自分に失礼な気がするんですよね」
栗原恵は、身長187cmと日本待望の長身アタッカーとして早くから注目され、19歳だった2003年のワールドカップで大活躍。同級生の大山加奈さんとともに“メグカナ”と呼ばれ一躍人気選手となった。その後'04年アテネ、'08年北京と2度の五輪に出場を果たす。しかし'12年のロンドン五輪では12名の最終メンバーから落選した。
度重なる怪我にも苦しんだ。これまで左膝を2回、右膝を1回、計3度も手術を受け、そのたびに1年近くをリハビリに費やさなければならなかった。それ以外にも足の裏の骨(種子骨)の骨折や、肩や腰を痛めるなどコートを離れることが多く、特に2010年以降は怪我と復帰の繰り返しだった。