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筒香嘉智が“セリフ”を気にする理由。
平凡なコメントは「超頭いい」ゆえ?
posted2016/07/29 07:00
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Naoya Sanuki
あまりに劇的な一発だった。
7月22日の横浜スタジアム。巨人・山口鉄也の投じた内角球を筒香嘉智のバットがとらえた。打球はライトスタンドへ一直線。延長12回の総力戦に決着をつけたサヨナラ弾は、プロ野球の歴史に「3試合連続2ホーマー」という史上初の記録を刻む一打でもあった。
神宮球場で行われた7月19日のヤクルト戦で2発、20日の同カードでも2発。そして22日の巨人戦では、第3打席ですでに、菅野智之のストレートをレフトスタンドに放り込んでいた。第6打席の28号ソロにより、3試合続けて本塁打での決勝点をマーク。27日の中日戦でも29号ソロを放ち、足踏み状態が続いていたヤクルト山田哲人の30本まで、ついに1本差と迫っている(7月27日終了時点)。
申し分ないパワーと高い技術を改めて証明した筒香だが、巨人戦後のヒーローインタビューではいつもとまるで変わらない言葉を並べた。
ホームラン連発もインタビュアー泣かせのコメント。
「(それにしてもすごすぎますね!)そんなことないです。点取るしかなかったので、後ろにロペスもいますし、強い打球を打ちにいって、ホームランになってくれてよかったかなと思います。(菅野投手との対戦はどうでした?)相手はセ・リーグナンバーワンのピッチャーだと思ってますので、打てたのはたまたまだと思います。(3試合連続2本のホームラン! どうなんでしょう、今の筒香さんは?)試合に勝つことが一番大事ですので、試合に勝てていることがうれしいです」
この試合に限らず、筒香がインタビュアー泣かせの選手であることは間違いない。感情にまかせて調子のいい言葉を発することはまずないし、意外な一面を引き出そうとマイクを向けても「チームが勝つことが一番」「数字を意識することはない」「明日の試合も全力でがんばります」そんな定番のセリフでかわされる光景を何度も目にした。
だが、過去のコメントをつぶさに読み返してみると、7月2日のお立ち台での発言がふと心に引っかかった。