セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
スペインの時代にイタリアが終止符。
EUROでまたも理性を超える結果が。
posted2016/06/29 11:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
キエフの仇は、パリで討たれた。
6月27日、パリで行われたEURO2016ベスト16ラウンド屈指の好カードは、イタリアが2-0で王者スペインを下した。
4年前の決勝の雪辱を果たしたアズーリは、無敵艦隊の大会3連覇を阻み、彼らの黄金時代に終止符を打ったのだ。
大一番の前夜、闘将コンテはチームにこう活を入れた。
「理屈だけで戦うのならイタリアは負ける。勝つには理性を超えたものが必要だ」
キックオフ直後、強い夕立ちに見舞われたサンドニで、ゲームの主導権を握ったのはイタリアだった。
大きな雨粒がグラウンドを叩く中、FWペッレによる8分のヘディングはGKデヘアに阻まれ、3分後にMFジャッケリーニが試みたオーバーヘッドはファウルをとられたが、25分には再びMFパローロがカウンターからへディングでスペインゴールを襲った。
対戦が決まって以来、名将デルボスケが抱いていた危惧は的中した。
据わった目は、無敵艦隊の綻びを見逃さない。
アズーリの3-5-2は、3トップのプレーリズムを狂わせる。“ティキタカ”のリズムを作れない無敵艦隊は、攻撃にも守備にも混乱をきたした。司令塔シャビのいなくなった中盤からは、組織的に相手をいなす術が失われている。
やがて雨が止み、日差しが戻ったときにも芝はたっぷりと水を含んで、足元は不確かなはずだったが、据わった目をしたアズーリ色の男たちは、無敵艦隊の綻びを見逃さなかった。
イタリアによる先制ゴールは、やはり泥臭かった。
33分、FWエデルがゴール正面から放った低いFKをGKデヘアは前へ弾いた。そこへMFジャッケリーニが突っ込み、DFキエッリーニが左足で押し込んだ。
PA内で守っていたスペインの選手たちのうち、こぼれ球に反応したのはDFピケたった1人だった。王者である彼らに、失点を悔しがる様子は見られなかった。