スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
EURO3連覇へ、キーマンはノリート。
スペインが用意する“プランB”とは?
posted2016/06/09 11:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
「緊急時に備えてメンバー構成のバランスをとり、様々なソリューションを用意する必要があった。あらゆる需要をカバーするパーフェクトな23人になったと思っている」
パコ・アルカセル、ジエゴ・コスタ、フェルナンド・トーレス、フアン・マタ、イスコ、サンティ・カソルラ、ハビ・マルティネス……。人材の宝庫であるがゆえ、今回も多くのタレントを選外とせざるをえなかったEURO出場メンバーの選考について、デルボスケはそう説明していた。
指揮官の言う通り、今回のラ・ロハはGKを除く全ポジションに2選手ずつを配置した、極めてバランスの整った構成となっている。過去の大会では攻撃のタレントを1人でも多く確保すべく、センターバックやサイドバックの控えを1人減らすことも厭わなかっただけに、これは目を引く変化である。
これまで3枠だったストライカーが2人に。
その結果、これまでどの大会でも必ず3人招集してきたストライカーも2枠に減った。先述した面々との競争を勝ち抜いたのは、アリツ・アドゥリスとアルバロ・モラタだ。
35歳にして初めて大舞台への挑戦権を手にした前者は、フィジカルコンタクトと空中戦の強さ、そして年々磨きをかけてきたフィニッシュの精度を武器とする。
後者はサイドでもプレーできる機動力や突破力といったカウンタースタイル向きの能力に加え、狭いスペースでも確実にボールをキープしながら周囲と連動できるテクニックやフットボールセンスを兼ね備える。いわばどんな状況にも対応できる万能型ストライカーだ。
ワールドカップ以降はコンスタントに招集リストに名を連ね、EURO予選を通してチーム最多の5ゴールを決めてきたアルカセルの落選は驚きだった。ただ「1ポジション2選手」の鉄則に従うのであれば、1枠は万能型のモラタ、もう1枠は現時点のパフォーマンスを基準にアドゥリスを選んだと考えることができる。