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イタリアの伝統は「弱者で勝者」。
“ティキタカ”を捨てて挑むEURO。
posted2016/06/05 08:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
「カテナチオ」
「ノー。カ・テ・ナッ・チョ!」
イタリア留学に来てすぐの頃、ルームメイトから発音をダメ出しされたことが忘れられない。談笑していた彼が急に真顔になり、「大事なことだから」と念押しされた。
“カテナッチョ”という言葉が、イタリア男の目の色を変えることを知ったのはそのときだ。
先月末、EURO2016に挑む23人のイタリア代表が発表された。
長年アズーリの拠り所だった司令塔ピルロが落選し、FWと中盤には国際大会に不慣れな顔ぶれが並ぶ。
予選を通じて重用されてきたFWペッレとFWエデルの2トップはメジャー大会初選出で、他の攻撃陣も地味な印象は否めない。
故障離脱したMFマルキージオとMFベッラッティの穴埋め役は、夏にそれぞれ34歳と33歳になるMFチアゴ・モッタとMFデロッシだ。
ユベントス組から大量8人を招集。
4年前のポーランド・ウクライナ大会では準優勝したアズーリだが、W杯王者ドイツや前大会優勝のスペイン、開催国フランスといった今大会の優勝候補との今大会における戦力面のギャップは相当に大きい。
列強国と伍するために、イタリア代表監督コンテは、かつて自らが鍛え上げた古巣ユベントスからの大量招集を断行した。
ユーベ時代に指導したMFジャッケリーニやDFオグボンナ、さらに予選未出場ながら抜擢したMFストゥラーロを含めると、ユベントス組は8人に上る。
とりわけ、守護神ブッフォンとセンターバック3人衆(バルザーリ、ボヌッチ、キエッリーニ)による守備陣は、アズーリ堅守の生命線といっていい。代表の重みを理解し、指揮官コンテの求めるサッカーを忠実に実行できる選手たちは、彼ら以外世界中どこを探してもいない。