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世界を駆けるFIFAコンサルタント。
杉原海太の言葉でJの制度を考える。

posted2016/06/01 10:30

 
世界を駆けるFIFAコンサルタント。杉原海太の言葉でJの制度を考える。<Number Web> photograph by Shinya Kizaki

FIFAコンサルタントは、世界に10人前後しかいない。日本人はもちろん杉原海太1人だ。

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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Shinya Kizaki

「国ごとに、置かれたサッカー界の状況も経済状況含めた国の状況も違うので、制度の導入はコピペではうまくいかない。」

杉原海太(FIFAコンサルタント)

 Number本誌の連載「スポーツ仕事人」の取材で、FIFAコンサルタントの杉原海太に話を聞く機会があった。

 FIFAでは一連の汚職事件の反省を生かし、リーグ、クラブ、選手の声をもっと反映すべく、新たに「フットボールステークホルダーズ委員会」を設立した。それに呼応する形で、「プロフェッショナルフットボール」部門も立ち上げられた。

 杉原は新部門の下で、世界中のリーグ、クラブ、選手をサポートする仕事をしており、クラブライセンス制度の世界各国での導入もそのうちの1つだ。ヨーロッパではクラブライセンス制度は広く導入されているが、それ以外の地域では制度が導入されていない国も多い。

 ヨーロッパにはクラブ経営のエキスパートも多く、またそういった人材を十分に雇う為の財源を確保できる国も多いが、アフリカ、アジア、北中米といった他の地域の現状は異なっている。そこで杉原は、こんな姿勢を心がけている。

「各国でクラブライセンス制度を導入する際には、押し付けるのではなく、その国の特性や現状を考えることが大事です。制度自体はドイツから始まったもので、お金を選手補強に使うだけでなく、施設、育成、運営の人材などにも投資し、長期にわたってクラブが持続可能になるという考え方が根本にあります。FIFAや大陸連盟からの大枠のガイドラインはありますが、その考え方さえ基本にあれば、あとは各国の現状や優先課題と併せて適用すべきだと思います」

使い方の前に、まずは資金が集まらなければ。

 規則というとクラブを縛るものに思われがちだが、杉原は否定する。

「クラブライセンス制度は、リーグを発展させるためのツールです。資金が集まっているが、その使い方が選手補強の様な短期的な用途に偏っているような国であれば、その点を是正する方向に使えばいいですが、資金が乏しい他の国で同じことをやったら逆効果。

 資金が集まらない国で優先順位が高くなるのはリーグを盛り上げて、ある程度の財源を確保する事です。そうしないと、いかなる施策も財源不足で実行できない。たとえばマーケティング担当者を雇うことを要件にして、リーグとクラブが一体となって稼ぐ事を推進したり、スポンサーやテレビ局に満足してもらえるような試合運営を実現する為の人員を要件にしたり。でも、『鞭』だけではダメですよ。リーグが、クラブが雇ったマーケティング担当者や試合運営担当者を集めて無償でセミナーを開催するといった『飴』も大事です」

【次ページ】 Jリーグの制度は本当に日本にあっているか。

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