マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
諦念に抗う者、生まれ変わった者。
オリックス・伏見寅威、大田阿斗里。
posted2016/03/01 10:40
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
オリックス・バファローズの春季キャンプが、宮古島からこの宮崎に移って2年目になる。
宮崎の繁華街の中心、「橘通り」から車でおよそ30分。キャンプの拠点となる「清武総合運動公園」の施設はすばらしい。
「SOKKENスタジアム」と呼ばれるメイン球場は中堅122m、両翼100mの広いグラウンドに、およそ5000人のファンを収容できるスタンドを備えていて、ここを一軍メンバーが使う。
すぐ隣り合って、同じサイズの「第2野球場」があって、こちらはファームが使用する。
その向こう側には、ランニングやトレーニングを行なう広大なグラウンドとドーム型の室内球技場。こちらは「日向夏(ひゅうがなつ)ドーム」と呼ばれ、主にリハビリ組のトレーニングが行なわれ、すぐそばには10人が一度に並んで投げられる屋根付きブルペンも設けられている。
巨人の「サンマリン」も、ソフトバンクの「アイビースタジアム」もそりゃあ立派な設備だが、オリックスのここ「清武」だってぜんぜん負けてはいない。
宮崎の市内だけでもこれだけのキャンプを張っているそのうえに、車で1時間あまりの日南では広島東洋カープが、南郷では埼玉西武ライオンズがキャンプを張っている。
この時期の宮崎は、さながら「キャンプ・パラダイス」である。
第2球場で見つけた、懐かしい伏見寅威の姿。
一軍メンバーの「SOKKENスタジアム」がまだアップの最中だったので、すでにバッティング練習の音がこだましている「第2野球場」へ向かう。
ダグアウトの横からグラウンドに入ると、すぐ目の前でバント練習を繰り返している選手がいる。マシン相手に1球1球体を沈み込ませ、バットの芯より先の狭いポイントにボールを当てて、打球をていねいに殺していく。
がっしりしたユニフォーム姿に大きな背中。誰だろう。
背番号23……、伏見じゃないか。
捕手・伏見寅威(ふしみ・とらい)。