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時速35.71kmで走るリーガ最速の男。
ビルバオが移籍を阻止したイニャキ。

posted2016/02/05 10:40

 
時速35.71kmで走るリーガ最速の男。ビルバオが移籍を阻止したイニャキ。<Number Web> photograph by AFLO

よくしなる右脚から繰り出されるシュートは強烈そのもの。フィジカルに加えてイマジネーションも持つ新星が登場した。

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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 冬の補強期間が終わった。

 バルサとマドリーを除いて相変わらずお金に困っているリーガに大きな動きはなく、買い物らしい買い物といえばアトレティコのアウグスト・フェルナンデス(セルタ)と、彼を失ったセルタのマルセロ・ディアス(ハンブルガーSV)とボビュ(リヨン)ぐらいで、あとはほとんどが期限付きの移籍。

 しかし冷え込んだ市場であっても話題は尽きず、中にはマンチェスター・シティやリバプール、トッテナムといったイングランドの強豪絡みのものがあった。

 狙われたのはアスレティック・ビルバオの新たなスター、イニャキ・ウィリアムスである。

 U-21代表でもあるウィリアムスは「バスク地方で生まれた者あるいはバスク地方のサッカークラブで育成された選手」のみ入団が許されるアスレティックにとって特別な存在だ。「イニャキ」はバスク地方でよく耳にする名前だけれど、「ウィリアムス」はバスクどころかスペインの姓でもない。実際その風貌も違っている。

25試合で12ゴール3アシストのキーマン。

 なにしろ彼は創立120周年を間近に控える名門のトップチームで、ユニフォームに初めて袖を通した黒人選手なのだ。(ちなみに初の非白人選手は'11年11月20日にデビューしたアンゴラ人の父を持つラマーリョ)

 ウィリアムスの母親は、'80年代末に内戦が勃発したリベリアからガーナに逃げ込んだ難民だった。その後スペインへ渡った2人はビルバオ郊外のバラカルドでイニャキを授かり、南へ下ったパンプローナで彼を育てた。

 肌の色は違えどバスクの男子であるイニャキはやがてサッカーに夢中になり、同時に頭角を現し始めた。そして地域の小クラブ、クルブ・ナタシオン・パンプローナからアスレティックに籍を移し、3部のクルブ・デポルティボ・パンプローナやバスコニアへのローンを経て'13-'14シーズン途中からアスレティックのBチームであるビルバオ・アスレティック(2部B)の一員となると14試合で8得点3アシスト。'14-'15シーズンは開幕からの15試合で11得点3アシスト。そこで故障者多発に頭を抱えていたバルベルデ監督に呼ばれ、リーガのコルドバ戦でトップチームデビューを果たした。

 今季はこれまで、公式戦25試合で12ゴール3アシストを決めており、好調アスレティックのキーマンであり続けている。

【次ページ】 時速35.71kmを記録し、リーガ最速男に。

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