“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
2度のU-19選手権敗退の屈辱を越えて。
遠藤航、キャプテンとして掴んだ五輪。
posted2016/02/02 10:50
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takuya Sugiyama
試練の先の栄光。そして再び試練――。
2010年10月、中国は山東省で開催されたAFC U-19選手権に参加するU-19日本代表に、1991年生まれの酒井高徳(現・ハンブルガーSV)、1992年生まれの宇佐美貴史(現・G大阪)らが名を連ねる中で、ただ1人1993年生まれ(2月9日生まれ)として招集されたのが遠藤航だった。
チーム最年少だったが、クレバーなCBとしてレギュラーポジションを確保し、全勝でのグループリーグ1位通過に貢献。しかし、U-20W杯出場権を懸けた準々決勝・韓国戦。スタメン出場を果たした遠藤に、悪夢が待ち構えていた。
立ち上がりから前線のチ・ドンウォン(現・アウクスブルク)とチョン・スンヨンという屈強かつ長身のツートップを目がけて、シンプルにロングボールを放り込んでくる韓国に対し、遠藤と平出涼(現・カターレ富山)のCBコンビは後手に回った。
2点先制の後、痛恨の判断ミスから流れが変わった。
13分と30分に指宿洋史(現・アルビレックス新潟)が幸先よく2点を先制したが、直後の31分、センターライン付近右から、ロングボールを放り込んでくると、これを遠藤が痛恨の判断ミス。目の前で大きくバウンドしたボールに対応しきれず、遠藤は自らの頭上に上がったボールを見つめることしかできない。飛び込んできたチ・ドンウォンにそのままヘッドでつながれ、これを受けたキム・ギョンジュンに難なく決められた。
これらはすべてペナルティーエリア内での出来事。CBとしてはっきりとプレーをしなければいけない状況で痛恨の判断ミスから献上したゴールが、その後、日本の両肩に大きくのし掛かってしまった。
44分には右CKをファーサイドで簡単にヘッドされ、DFに当たったこぼれ球をあっさりと押し込まれ、2-2の同点。
「もう混乱というか、完全にのまれてしまった」(遠藤)
その後もロングボールに対して競りに行けず、バウンドしたボールを相手に簡単に受けられるという苦しい展開に陥った。そして前半アディショナルタイムには更なる悪夢が待っていた。