フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
前米国王者ブラウンが代表漏れ!?
世界選手権に影響する羽生の存在。
posted2016/01/31 08:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
1月24日に終了した全米選手権の直後、USFSA(全米フィギュアスケート連盟)が世界選手権男子代表のメンバーを発表した。
興味深いことに、その中に昨年度の全米チャンピオン、ジェイソン・ブラウンの名前はなかった。怪我で欠場することになった全米選手権開催前に、USFSAに対して世界選手権の代表入り考慮の陳情を正式に行っていたが、ブラウンは代表はおろか、補欠にすら入っていなかった。
なぜブラウンの陳情は蹴られたのか?
USFSAのルールでは、全米優勝の選手は無条件で代表に選ばれる。だが2人目、3人目に関しては、シーズン通しての成績やこれまでの実績などを考慮して、連盟理事会の裁量で決定できることになっている。実際2年前には、全米総合4位だったアシュリー・ワグナーが、3位だった長洲未来の代わりにソチ五輪の代表に選ばれた前例もある。
米国男子が今年の世界選手権で3枠獲得できたのは、ブラウンが昨年の上海世界選手権で4位と健闘したことが大きかった。いわば、ブラウンの貢献あっての3枠と言える。それを考えると、ブラウンに1枠渡していてもおかしくない状況ではあった。
だが3月の世界選手権の代表に選ばれたのは、優勝したアダム・リッポン、2位のマックス・アーロン、3位のネイサン・チェンのトップ3人という順当な顔ぶれだった。
その裏には、ブラウンを代表にできない理由があった。
4回転なしで初優勝したアダム・リッポン。
新チャンピオン、26歳のアダム・リッポンは、全米選手権シニアで競うのは今年が8年目のベテラン選手である。体が柔らかく音楽表現が素晴らしいものの、4回転はルッツのみで、これまで一度も試合で成功させたことはない。
「自分のスケートのあらゆる側面をしっかり見せようと思って滑った。今夜トップになることができたのは、そのためだと思う」
リッポンがこう会見で語ったように、彼はSPでは4回転に挑まず、フリーの4回転ルッツは回転不足で転倒。そこから8度の3回転をノーミスできめての、SP3位からの逆転勝利であった。細部まで神経の行き届いた質の高い演技だったものの、結果的に4回転なしの優勝となった。