野球のぼせもんBACK NUMBER
馬原孝浩、最後の最後まで真面目に。
やるべきことを全てやった果てに。
posted2015/12/16 10:50
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Tamon Matsuzono
歴代7位、通算182セーブ。
12月14日、馬原孝浩が現役引退を表明した。
会見などは開かれず、自身のマネジメント会社を通じて「シーズンが終わって2カ月間、体の状態と照らし合わせ、自分のベストパフォーマンスができなくなったと判断した」とコメントを寄せたのみ。
静かに、あまりにも潔く、一時代を築いた守護神はそっとユニフォームを脱いだ。
ホークスで長らくストッパーを務め'07年には38セーブを挙げてタイトルにも輝いた。'13年にバファローズに移ってからも、昨年は55試合に登板して32ホールドと2位躍進に一役買った。
最速158kmの剛速球。鋭く大きく落ちるフォークボールも冴え渡った。カットボールを武器にした時期もあり、ホークス時代のチームメイトで仲良し同級生だった川崎宗則は「ヤンキースのマリアーノ・リベラみたいに凄いから!」と言って、馬原のことを「マベラ」と呼んでいた。
そんな名投手なのに、あまりに寂しすぎる幕引きだ。
しかし、馬原らしい決断だな、とも感じた。
熊本生まれ。九州男児の中でも「肥後もっこす」と表現される県民性は、純粋で正義感が強く、一度決めたら梃子(てこ)でも動かないほど頑固で決して妥協しないといった、男性的な性質を指す。
栄光の陰で、右肩の故障とも長く戦った。
バファローズでプレーを続けることもできたが……。
タイトルを獲った翌年の'08年に右肩炎症で一時離脱。'10年にはリーグ2位の32セーブ、防御率1.63、被本塁打1と完全復活を遂げたように見えたが、その後は再び右肩違和感に襲われた。
そして'12年、ついに肩にメスを入れた。翌年からバファローズでプレーし、'14年は一軍で活躍したが、全盛期と比べれば寂しさは否めなかった。