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豪華な経歴と「本物」の負けず嫌い。
バドミントン界のエース・桃田賢斗。
posted2015/12/12 10:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
ついに、日本一を手にした。この1年あまりの実績を考えれば、それは当然のことだったかもしれない。
12月6日、バドミントンの全日本総合選手権男子シングルス決勝後、桃田賢斗は初めて手にする優勝トロフィーを重たそうに受け取ると、ただただ笑顔だった。
今年9月に21歳の誕生日を迎えた桃田は、日本男子の成績を押し上げてきたバドミントン界のホープである。いや、もはや男子シングルスのエース格と言ってよい。
その経歴は、華麗だ。
小学生、中学生のとき、同年代の大会で日本一に輝く。中学3年のときには、男子として初めて、全日本総合選手権予選に出場した。
高校生になっても足取りに狂いはなかった。1年生のときから大会で活躍を見せ、3年時に世界ジュニア選手権で、日本選手では史上初の金メダルを獲得。
数々のタイトルを手にNTT東日本に入社すると、成長は加速する。
2014年5月、国別の世界一を争う団体戦「トマス杯」に、日本代表として初出場。出場したシングルス5試合すべてで勝利し、日本の初優勝に貢献する。
今年の4月には、オリンピック、世界選手権に次ぐ位置づけの、年間を通じて行なわれるスーパーシリーズの1つ、シンガポールオープンで日本男子シングルスでは初めてとなる優勝。8月の世界選手権でも、日本男子シングルス初のメダルとなる3位に入った。
武器はネットプレーと駆け引き。
何度も「初」の文字が並ぶことが、桃田がすでに成し遂げてきた成果の大きさを物語っている。世界ランキングは5位。世界のトップを争う地位にあり、日本バドミントン界を牽引する立場にあると言っても過言ではない。
その強さの理由はどこにあるのか。
技術的に定評があるのは、相手がネット際に落としてきたシャトルを逆にネット際すれすれに落とす「ヘアピン」をはじめとするネットプレー、相手との駆け引きのうまさなどだ。つまり、テクニックに秀でていることが強みである。
テクニックに優れているのは、10代前半から意識して磨きをかけてきたからだ。原点は中学時代にある。