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三浦隆司、ラスベガスで壮絶に散る。
“第2のパッキャオ”へ向け、評価は不変。
posted2015/11/24 11:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
USA TODAY SPORTS/AFLO
テレビの前で茫然としたファンも多かったのではないだろうか。世界のボクシングの心臓部、ラスベガスの舞台で三浦隆司(帝拳)が壮絶に散った。指名挑戦者フランシスコ・バルガス(メキシコ)を迎えて行われたWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチは、現地のメディアから「年間最高試合」との声すら上がるほどの激戦が展開された末、王者の三浦が9回1分31秒TKO負けで5度目の防衛に失敗。2年7カ月にわたって守り続けた王座から陥落した。
実にスリリングで、かつ悔しい敗戦だった。
北京五輪メキシコ代表でここまで23戦無敗のバルガスは30歳にしてメキシコ期待のホープ。31歳の三浦はこれまでの世界戦で4人のメキシカンを退けているが、彼らと比べてもバルガスは最も実力のある選手だと目されていた。バルガスが世界初挑戦であるにもかかわらず、賭け率でわずかに優位に立っていたのは、その証拠とも言えた。
初回に被弾も三浦は果敢に攻め続ける。
不安は初回に的中する。
試合開始から1分20秒ほどだった。バルガスが身体をずらしながら放った右フックが正面からチャンピオンの顔面をとらえ、三浦のヒザがガクッと折れる。ダウン寸前のピンチに陥った三浦は辛くもこのラウンドを乗り切るが、いきなりV5に赤信号が点灯という立ち上がりとなった。
日本で“ボンバーレフト”の異名を持つ三浦はサウスポースタイルから繰り出す強打が自慢。一方で帝拳ジムの浜田剛史代表が「打っても強い、打たれても強い」と評するように、多少の被弾はものともせずにグイグイと前に出るたくましさも強みである。かなりのダメージを受けたとはいえ、そこはやはりタフなチャンピオンだ。2、3回と少しずつ立て直し、迎えた4回、左ストレートを真ん中から打ち抜いて挑戦者をキャンバスへ突き落す。ボンバー劇場の幕開けを予感した場面だった。
しかし、コトは簡単に運ばない。