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あの“細かすぎるモノマネ”芸人が、
四国ILのトライアウトで真剣勝負!
posted2015/11/04 10:40
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
10月29日の早朝。都内の室内練習場には元日本ハムのイースラーも、元阪神のフィルダーとキーオもいなかった。
<ヴェー、ヴェーヴェーヴェー!>のイントロから始まるバースの応援歌も聞こえない。室内に鳴り響いていたのは、キャッチャーミットの乾いた捕球音だけである。
「次、スライダーね」
「あ! チェンジアップすっぽ抜けた……」
「今のストレートよくない!?」
お笑い芸人「360°モンキーズ」の杉浦双亮は、練習パートナーの草野球仲間を相手に、1球、1球、丁寧にボールを投げていた。
「球速を測ったことないんですけど、どのくらい出ているんですかね。130……そこまでいっていないかな? 高校時代と比べて15キロから20キロは足りないと思います」
野球を始めた小学3年生から「投手一筋」の杉浦は、自嘲気味に笑みをこぼす。
そこには、バラエティ番組の人気コーナー「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」で一躍脚光を浴びた、助っ人外国人のマニアックなモノマネは存在しない。服装にしても、いつも着用している上下青で統一されたジャージではなく、スポーツ選手が普段身につけているトレーニングウェア。その姿だけを見る限り、とても芸人とは思えない。
それもそのはず。杉浦は真剣にトレーニングをしているのだ。極端に言ってしまえば、少しでもアスリート仕様の体を作り上げようと、自分を追い込んでいる。
目的はただひとつ。11月4日から10日まで香川県で開催される、四国アイランドリーグplusのトライアウトリーグに参加し、合格するためだ。
40歳というひとつの区切りを迎える前に……。
現在39歳。
草野球で年間数十試合プレーしているとはいえ、挑戦するにはあまりにも遅すぎる。しかし、杉浦は「今だからこそ」とトライアウト参加の意義を切々と語る。
「おっしゃるとおり年齢的には遅いんですよ。それでも、『今やらないと後悔する』と思ったんですね。多分、トライアウトの存在を知らなかったらこのままの生活が続いていたと思いますけど、草野球仲間からその話を聞いたとき、自分の気持ちに嘘がつけなかった。何もしないで諦めるのは簡単だけど、諦めるにしても実際にトライアウトを受けて諦めたいんです。40歳というひとつの区切りを迎える前に、自分の実力を試してみたい。できることなら、1度でいいからお客さんの前でマウンドに立って投げたいんです」