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日本シリーズは“パ式”対決だった。
力負けのヤクルトが選ぶべき道は?

posted2015/10/30 18:20

 
日本シリーズは“パ式”対決だった。力負けのヤクルトが選ぶべき道は?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

新人監督対決で敗れた真中満監督。来年に向けてすでに構想を練り始めていることだろう。

text by

鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Hideki Sugiyama

 61勝44敗。

 この勝ち負けの数字が何かと言えば、今季の交流戦をパ・リーグ側から見た成績である。

 17の勝ち越しという圧倒的な数字に、今の両リーグの力の差が表されている。実力のパは、もはや誰も否定できない、いまの日本のプロ野球のまぎれもない現実なのである。

 そう考えれば今年の日本シリーズの結果も、しごく当たり前のものとして受け入れることができるだろう。

 4勝1敗。

 この数字以上の圧倒的なチーム力の差を見せつけて、ソフトバンクがヤクルトを退けた。2年連続日本一の栄冠を手にしたが、このチーム力ならまだまだ黄金時代があと数年は続くことを予感させる圧勝劇だった。

「選手が1戦、1戦を大事に、絶対に負けないんだという気持ちを出してくれた。本当に幸せです」

 優勝監督インタビュー。選手の手で9度、神宮の空に舞ったソフトバンクの工藤公康監督が目を潤ませてこう語った。

3度の無死二塁で、バントは一度もなし。

 言葉通りこのシリーズでの工藤采配は、まさに選手を信頼し、個の力を前面に押し出すものだった。その力の野球で、ヤクルトを圧倒しのだ。

 日本一に王手をかけた第5戦も、先発のスタンリッジがヤクルト打線を抑え込み、4回に李大浩の2ランで先制すると、5回にも先頭の今宮健太が二塁打から明石健志の適時打などで2点の追加点を奪う。あとは自慢の中継ぎ、リリーフ陣を繰り出してツケ入るスキも与えず完勝した試合内容だった。

 象徴的なのは、この試合で3度あった無死二塁のシチュエーションでの采配である。

 1回は川島慶三が左中間に二塁打で、4回には明石が左翼線に、そして5回に今宮、と無死から3度作ったチャンスで、工藤監督は1度もバントのサインを出していない。

【次ページ】 1点よりも、大量得点を狙うスタイル。

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