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頭の回転が足の回転に追いついた!?
本物のFWに“化けた”ウォルコット。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2015/10/11 10:30

頭の回転が足の回転に追いついた!?本物のFWに“化けた”ウォルコット。<Number Web> photograph by AFLO

ウォルコットは、2003-2004シーズンの無敗優勝以来となるリーグタイトルをアーセナルにもたらすか。

スピードで、味方の得点を生む。

 1トップには、フィニッシュの他に周囲の味方の得点機を呼び込む仕事も求められる。その方法としては、ポジションを競うオリビエ・ジルーが得意とするフィジカルを生かしたポストワークが代表的だが、ウォルコットのように、持ち前のスピードを武器としたランで攻撃的MF陣にスペースを提供する方法も有効だ。

 ボール支配率が高く、アタッキングサードに頭数が揃うアーセナルには、その方が向いているとさえ言える。先のマンU戦前半のように、苦手と言われた強豪対決でも、立ち上がりからの攻勢が可能なのであれば尚更だ。

 ウォルコットの変身ぶりには、1トップとして出場時間を重ねることで得られた自信も大きく影響しているに違いない。ウォルコットのセンターFWとしての今季初先発が「オーディション失格」と報じられる結果に終わった後も、ベンゲル監督は彼に最前線を任せている理由を「肉体的なピークを迎える年齢で、期待が持てる時期にある」と説明している。

 実際には、今夏の新戦力獲得を見送り、ジルーがフランス代表でも調子と自信の低下を窺わせ、ダニー・ウェルベックの故障が長引いているというFW事情があるにしても、1トップで先発した開幕後の6試合で3ゴール3アシストのウォルコットが、現時点での第1FWであることは間違いない。

「自分達の存在を忘れるな」とライバルに発信。

 リーグで17年ぶりとなる3点差勝利を収めたマンU戦は、指揮官も「センターFWウォルコット」のベストゲームだと認めている。理由は「これまでで一番、勝利への決意が感じられたから」とのこと。たしかに、バスティアン・シュバインシュタイガーを相手にスライディングタックル2連発でボール奪取を試み、即座に立ち上がって前線へとダッシュしたウォルコットは、CL戦2連敗を受けて立ち直りに必勝を期していたチームの意気込みを体現していた。

 当のウォルコットは「自分たちの存在を忘れるなというメッセージを、ライバル勢に発信したかった」と試合後に語っている。昨季までであれば、口先ではもっともらしいことを言うと軽視されているところだが、今回は個人としてもチームとしても説得力あるパフォーマンスに裏付けされており、周囲も頷かざるを得ない。

【次ページ】 優勝を目指せるアーセナルの象徴に。

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