ボクシングPRESSBACK NUMBER
山中慎介、V9モレノ戦は最大の試練。
互いのペースを奪い合う神経戦必至。
posted2015/09/21 10:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Toshio Ninomiya
パナマの英雄アンセルモ・モレノは、何となく山中慎介に似ていた。
試合までちょうど1週間に迫った9月15日、帝拳ジムで行なわれた挑戦者の公開練習。初の日本に、アウェーの環境、それに今度負けたらバンタム級のトップ戦線から脱落してしまうという状況ものしかかる。いくら元世界王者とはいえ、もっとピリピリしているのかと思っていた。
しかしWBA王座を6年以上にわたって12回も防衛し、スーパー王者に君臨したモレノの表情は実に穏やかで、報道陣の合同インタビューにも丁寧に受け答えをしている。
「ヤマナカはいい左を持っている素晴らしいチャンピオンだ。きっとグレートな試合になると思う。簡単ではないが、必ず勝てると思っているよ」
この日はシャドーボクシング、ミット打ちなどを披露したが、軽いステップワークを見ても順調な仕上がり具合が伝わってきた。
2人が似ているなと感じたのは、自分を飾らず、神経質なところもなく、実に飄々としているところ。余裕を感じさせるわけでもなく、かといって気負いもない。山中が常に漂わせるような自然体の雰囲気を、このモレノからも感じ取ることができた。
山中慎介、9度目の防衛戦は最大の試練。
9月22日、東京・大田区総合体育館で行なわれるWBC世界バンタム級タイトルマッチ。
9度目の防衛戦となる山中にとって、最大の試練を迎えたと言っていい。モレノは無冠ながら、いまなおバンタム級のビッグネームであることに変わりない。近年2つの黒星を喫しているが、アブネル・マレス戦は1階級上で臨んだ試合であったし、直近のファン・カルロス・パヤノ戦も負傷判定での敗北。衰えたと見る向きは少なく、実力、経験値を考えれば脂が乗り切っている30歳だ。
飛ぶ鳥を落とす勢いの山中と、バンタム級で一番の実績を誇るモレノのサウスポー同士の一戦は、まさに「バンタム級頂上対決」と呼ぶにふさわしい。