スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
実力者の逆襲と大器の飛躍。
~ブライス・ハーパーが大爆発~
posted2015/05/30 11:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
ようやく、という感じでナショナルズが上がってきた。序盤のつまずきでやきもきしていたファンも、これでひと安心だろう。
開幕前、ナショナルズは大本命に挙げられていた。地区優勝やナ・リーグのペナント獲得だけでなく、今年こそワールドシリーズ制覇、という声が高かったのだ。
先発陣の顔ぶれを見れば無理もない。スティーヴン・ストラスバーグ、ジョーダン・ジマーマン、ダグ・フィスター、ジオ・ゴンザレスに加えてFA市場最大の目玉マックス・シャーザーをも獲得したからだ。2014年に15勝を挙げたタナー・ロアークをブルペンにまわせるというのは余裕か贅沢か。いずれにせよ、今季100勝できるチームが出るとしたら、ナショナルズは筆頭候補だった。
しかし、4月早々に逆風が吹いた。故障者が続出し、遊撃手イアン・デズモンドがエラーの山を築いたこともあって、開幕後20戦で7勝13敗。加えて、ストラスバーグやゴンザレスの調子が上がらない。4月27日にはナ・リーグ東地区の単独最下位に転落するというありさまで、首位メッツにはその時点で8ゲーム差をつけられていた。
翌28日、ナショナルズは悪夢の追い討ちをかけられそうになった。アトランタで行われた対ブレーヴス戦。ゲーム序盤から投手陣が乱れたナショナルズは、2回終了時で1対9、4回終了時には2対10の大量リードを許していたのだ。
スイッチが入ったナショナルズは17勝4敗の快進撃。
ところが、ここから大逆襲がはじまった。5回表、ホゼ・ロバトンの3ラン本塁打などで6-10と追い上げを開始したナショナルズは7回表に10-11と1点差に迫り、9回表にはダン・アグラの3点本塁打でついに勝ち越したのだ。8点差をひっくり返した13-12の逆転勝ち。ここでナショナルズにスイッチが入る。
以後の21試合で、ナショナルズは17勝4敗の快進撃を見せた。地区単独首位に立ったのが5月20日。その後も好調はつづき、5月25日現在の成績は27勝18敗。《強いチームは6月以降から本気を出す。が、その前から調子が上がればさらに盤石》(スパーキー・アンダーソン)という格言を裏づけるような安定感さえ漂わせている。