SCORE CARDBACK NUMBER

相次ぐ計量失格と、タイトルの“軽量化”。
~「落とさないが勝ち」を許すな~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byAFLO

posted2015/05/26 10:00

粟生vs.ベルトラン戦には、村田諒太が厳罰化のルール改正を提起するなど現役選手も苦言。

粟生vs.ベルトラン戦には、村田諒太が厳罰化のルール改正を提起するなど現役選手も苦言。

 試合前日に行われる公式計量の場で、ボクサーが契約で決められた体重に落とす。当たり前のことだが、落とせなければ大変なことになる。何かに似ている。なんのことはない、今この原稿を書いている作業と同じではないか。約束の時間までに分量通りの原稿を書いて編集者に送る。ただし約束を守れないと……締め切り時間をオーバーし焦り気味の筆者は、減量ボクサーに同情してしまう。

 前置きはさておき、ここ最近内外の試合で契約体重を作れず、大騒ぎになるというケースがまた相次いでいる。4月8日の日本フライ級タイトル戦では、村中優が50.8kgのリミットを1.2kgオーバーして失格。戦わずしてタイトルを取り上げられた。村中は翌日の試合直前に再計量し1kg以上体重を増やさないことを条件に試合を許された。そして試合では林徹磨に判定勝ち。ばつの悪い勝者は敗者のコーナーに歩み、跪いて謝罪した。

 村中戦の4日後、ニューヨークで行われたWBO世界ミドル級タイトル戦では、挑戦者クイリンが体重をオーバーして失格し、試合は引き分け。さらに5月1日、ラスベガスのWBO世界ライト級タイトル戦では、粟生隆寛の相手ベルトランが、やはり体重オーバーで失格。粟生は2回、メキシカンの右強打一発で倒され、初KO負けで3階級制覇の夢ならず。

王座をはく奪されてもチャンスのある現状は……。

 村中の計量失格の際、過去の日本タイトル戦で同様のケースとして引っ張り出されたのは、'67年のバンタム級戦。斉藤勝男が体重をオーバーして王座をはく奪され、試合では挑戦者・牛若丸原田に2回KOで惨敗した。半世紀近く前の試合が取り上げられるとは、日本人ボクサーはなんて律儀に体重調節するのだろうと感心する。近年特に世界戦で計量失格が珍しくなくなったから、なおさらである。

 昔は計量に失敗した選手が試合でも負けるのが当たり前だったが、今は逆で、失敗した選手の方が勝つことのほうが圧倒的に多い。以前この欄でも取り上げたように、計量失格のペナルティで王座をはく奪されても、チャンピオン認定団体が4団体に増えたおかげで、少し待てばいくらでも次のチャンスがくる。だから、失格した選手はそれ以上減量に無理をせず、体力温存を図って勝つことにこだわるのだ。「落とさないが勝ち」を許さない、なんらかの手立てが必要である。

関連コラム

ページトップ