岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
世界最強リーグに日本が入るまで。
スーパーラグビーは“魔法の杖”か。
posted2015/04/23 10:40
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph by
AFLO
ラグビー日本代表のGMに就任して約4年。私が代表強化のために取り組んできた試みは、大きく分けて2つあったと言えます。
1つ目は、今年9月に行なわれるW杯イングランド大会や2019年のW杯日本大会に向けて、即効性のあるカンフル剤を打つことでした。具体的には、代表としての活動期間の大幅な増加、世界の強豪チームとの強化試合の実現、W杯で優勝した経験を持つ超一流スタッフの起用などがこれに当たります。
並行して、トップリーグのクラブチームに対しては、要請があればコーチングスタッフを派遣しつつ、海外のリーグで選手がプレーできるようになるためのサポートをしてきました。トップリーグを一気にレベルアップするのが難しいのであれば、選手を武者修行の場に送り出すのが有効なオプションになるからです。
ただし、これらの改革案には限界があるのも明らかでした。即効性は期待できても、短期的な対症療法の域を超えない――。日本ラグビー全体として継続的にレベルアップしていくような「構造」がビルトインされたわけでも、採算性を確保するビジネスモデルが確立されたわけでもないからです。
他方では、海外でプレーする選手の数が増えても、国内リーグのレベルアップになかなか直結しないという問題も存在しました。それどころか海外組の増加は、日本ラグビーの空洞化をもたらしかねません。海外組が増えても、国内リーグのレベルが下がれば代表の強化にはマイナスになりますし、スター選手の海外流出はラグビーという競技自体の認知度を上げ、新たなファンを獲得していく際の障害にもなってしまいます。
長期的な強化の柱、スーパーラグビー参戦。
これらの問題を解決するべく、私が協会のスタッフと共に取り組んできたのが、代表強化のためのもう1つの試み、長期的な強化策の導入でした。その柱こそ、昨年11月に発表されたスーパーラグビーへの参入なのです。
スーパーラグビーとは南半球の強豪3カ国、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカにアルゼンチンを加えた4カ国がそれぞれ複数の特別チームを編成して競い合う大会の名称です。この大会への参戦は、日本のラグビー界全体を発展させる起爆剤として、私がプロの選手として活動していた頃から温め続けてきたアイディアでした。