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<天才スイマーが目指す未来> 萩野公介 「青年は水の中で考える」 

text by

吉井妙子

吉井妙子Taeko Yoshii

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2015/02/02 11:50

<天才スイマーが目指す未来> 萩野公介 「青年は水の中で考える」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama
日本人男子として初めて、個人メドレーで五輪メダルを獲得。
だが彼は「史上初」に価値を見出していなかった――。
何のために泳ぐのか。思考し続ける若者の本音に迫る。

「僕の心根の部分をきちんと言うのは初めてだし、多分、誰にも分かってもらえないような気もするんですけど……」

 今しがたまで水中で激しい追い込み練習をこなしてきた萩野公介は、プールサイドの事務室の椅子に深く身を委ねながら、視線を宙のある一点に止めた。顔が赤らんでいるのは、練習の疲ればかりではない。頭をフル回転させている様子が表情から伝わってくる。

「うーん、やっぱり難しいですね。自分の考えていることを上手く言葉に転化できない……。言葉って、人がコミュニケーションを取るために集団生活の中から生まれてきた道具じゃないですか。僕が今考えていることは、僕個人の体験の中から感じたことなので、無理に話したところで皆さんには何の参考にもならないだろうし」

正確な言葉を探す姿勢に、器の大きさを感じる。

 水泳選手の萩野は昨年8月、20歳になった。子供の頃から“怪物”と称され、高校生で出場した'12年ロンドン五輪の水泳400m個人メドレーで、日本人男子初の銅メダルを獲得。翌年4月に行われた日本選手権では200mと400mの個人メドレー、200mと400m自由形、100m背泳ぎで勝利し、前人未到の5冠を達成した。

 20歳となった直後に開催された'14年8月のパンパシフィック選手権と9月のアジア大会では、あわせて金6、銀3、銅2の11個のメダルを獲得。アジア大会の大会MVPに選ばれただけではなく、昨年末、米国の水泳専門誌「スイミングワールド」で“'14年の最優秀選手”に選出された。同誌のMVPに選ばれたのも日本人として初めてだった。

 日本水泳界の歴史を次々に塗り替える萩野に改めて、“二十歳の決意”を聞こうと東洋大学の水泳部を訪ねた。すると、ほどなく冒頭のような言葉を漏らし、逡巡し始めたのである。

 自己対峙の鋭い選手は、他人の目線や干渉を嫌う。内圧が強いと、他人の思考をはじき出してしまうからだ。

 だが萩野は、オープンマインド。限られたインタビュー時間内で、自分の考えを少しでも正確に伝えようと言葉を探し続ける姿勢に、二十歳とは思えない器の大きさが感じられる。

【次ページ】 天才スイマーに影響を与えた両親の“考え”とは。

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