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J2MVPに輝いた田中、昇格までの決意と覚悟。
~松本山雅で継いだ松田直樹の魂~ 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2015/01/01 10:30

授賞式で田中は「これからが勝負なんだと思います」と語り、来季に向け気を引き締めた。

授賞式で田中は「これからが勝負なんだと思います」と語り、来季に向け気を引き締めた。

「多くのファンやサポーターに選んでもらえたことに価値があると思う」

 Jリーグアウォーズ来場者の投票によって決まる「J2 Most Exciting Player」に選出された松本山雅の田中隼磨(はゆま)は、喜びを強く噛みしめていた。

 名古屋グランパスでレギュラーを張りながら戦力外通告を受け、悔しさを胸に秘めて出身地の松本を新天地に選んだのが今シーズン。無尽蔵のスタミナとアグレッシブなプレーで「走る山雅」の象徴となり、J1昇格に大きく貢献した。得点を稼いだわけでも多くのアシストを記録したわけでもない。それでも右サイドのダイナモは圧倒的な存在感を放っていた。

 5月24日のジュビロ磐田戦で右ひざ半月板を負傷。彼は治療に専念する道を敢えて選ばず、昇格を決めるまでケガの事実をチームメイトに明かさなかった。

「ひざが壊れてもいいぐらいの覚悟がありましたから。俺たちはうまくないし、強くもない。昇格という目標に向けて中途半端な気持ちでは戦えないし、だから自分もこれぐらいで負けるわけにはいかなかった。(ひざは)2015年の開幕に間に合うかどうか分からないけど、自分の判断は間違いじゃなかったと思う」

「周りを巻き込んでいく力がハユさんにはある」

 2011年8月に急性心筋梗塞で他界した松田直樹は横浜F・マリノス時代に薫陶を受けた大先輩である。その松田が着けていた山雅の「3番」を受け継いだ重みが、強固な覚悟と決意を生み出していた。奇しくも右ひざ半月板は松田の古傷でもある。田中自身、何らかのメッセージを感じずにはいられなかった。

「これまでケガらしいケガなんてしたことがなかったのに、3番を背負ったらこれですからね(笑)。でもマツさんから与えられた試練なんだと感じました」

 32歳の田中は、松田と同じく年長者としてチームを束ねる役も自然と担うようになっていく。キャプテンを務めるセンターバックの飯田真輝はこう語っている。

「マツさんもそうですけど、周りを巻き込んでいく力というのがハユさんにはあるんです。チームが自信を無くしかけているときに『やれるんだよ、俺らは』とみんなをいい方向に導いてくれる。ハユさんの言葉には何度も助けられました」

 1年前、戦力外の憂き目に遭いながら、重圧、試練に打ち勝ったその先には“J2MVP”という勲章が待っていた。

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