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優勝の呪縛から解放され、ヒートが手にした“楽しさ”。
~ボッシュとウェイド、心境の変化~ 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byGetty Images

posted2014/11/02 10:30

優勝の呪縛から解放され、ヒートが手にした“楽しさ”。~ボッシュとウェイド、心境の変化~<Number Web> photograph by Getty Images

 シーズンを戦う中で、一番重要で、優先されるべきことは何だろうか。

 そんな問いかけに対して、選手から「優勝」という優等生的な答えが返ってくると誰もが納得するのだが、実際には、そう単純なことでもない。優勝のためにすべてを犠牲にして戦うことはプロとして称賛される姿勢だが、選手も人間だ。プレッシャーに疲れてしまうこともあれば、優勝の呪縛から解き放たれることで新たなやりがいを見出すこともある。

 今季のマイアミ・ヒートは、まさにその状態だ。4シーズンの間チームの大黒柱だったレブロン・ジェイムズが去り、有力な優勝候補から並のチームに格下げになった。ヒートの選手たちは、誰しも心からジェイムズの残留を願っていたが、実際に彼がいなくなり、優勝候補でなくなったことで見つけたものもあった。新しいチャレンジだ。

 たとえばクリス・ボッシュ。この4シーズンは優勝のために犠牲となり、脇役に徹してきた。ジェイムズが抜けたことで、かつてトロント・ラプターズにいた頃のように大黒柱としてチームを率いる機会が巡ってきたことを歓迎している。

「以前よりも多くを学び、いい選手になれたと思う。再びオフェンスやチームのリーダーとして責任ある立場を任されるのは楽しみだ」とボッシュは言う。

昨季はファイナル進出も「まったく楽しめなかった」。

 ヒート一筋12年目のシーズンを迎えるドウェイン・ウェイドは、この先、引退までの数年でやりたいことを聞かれて、「バスケットボールを楽しみたい」と答えた。ジェイムズがいた4シーズンは毎年ファイナルに進むことができた充実した時間だった。しかしその一方で、楽しい時ばかりではなかったというのだ。

「なぜなのかは自分でも説明できないけれど、去年は特に、まったく楽しめなかった」とウェイドは明かした。

 登山に喩えると、昨季までのヒートは、山頂に向かってせり立つ崖に常に対峙していたのかもしれない。下から追手も迫る中、すぐ前に見えながらも遠い山頂を目指し続けてきた。それに対して、今季は少し回り道をしながら登山道を進むことになる。山頂は常には見えないが、別の楽しみややりがいがある。

 プロの中にも“優勝だけがすべて”ではない世界がある。そのことを、選手たちは表だって認めないかもしれないが――。

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