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ビアンキの不運な事故前に見逃された2つの“警告”。
~雨の鈴鹿、高まっていたリスク~ 

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今宮純

今宮純Jun Imamiya

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posted2014/10/18 10:30

ビアンキの不運な事故前に見逃された2つの“警告”。~雨の鈴鹿、高まっていたリスク~<Number Web> photograph by Getty Images

2年目の今季、ビアンキはモナコGPで9位に入賞しチーム史上初のポイントを獲得した。

 鈴鹿でのビアンキ(マルシャ)の事故で、20年前を思い出さずにはいられなかった。秋雨のなか、'94年の日本GPは序盤からクラッシュが発生。13周目にはS字を上りきった左コーナー出口で1台がスピンすると、その事故処理作業中にもう1台がスピンした。この時はコースマーシャルが重傷を負い、レースは赤旗中断の後、2ヒート制ルールでようやく終わった。1時間55分53秒532。鈴鹿F1史上『最も長い日』だった。

 今年の鈴鹿でも、接近する台風18号がもたらす雨が朝方から降り続いていた。今季初めてのフルウェットコンディション。今のドライバーたちは、誰ひとり鈴鹿でのウェットレース経験が無い(最近のウェットは'10年土曜のフリー走行)。

 午後3時スタートの直前、急に雨が強まった。事前の慣熟走行時にはコース上に“川”ができるほどではなかったものの、水が溜まり始め、スタート遅延措置がとられるかと思えた。日没は5時半だが雨天なので4時半ごろには暗くなる。ペースはおそらく1分55秒前後。つまり正規周回数の53周はこなせない――。

早すぎたセーフティーカースタート、そしてタイヤ。

 私見を述べるとセーフティーカースタートが早すぎた。ドライ時の1分落ちで先導するメルセデスに追従できずエリクソン(ケータハム)がスピン。これをコンディション悪化の“警告”と捉えるべきだった。警告とは、マシン戦力が低い者ほど雨天ではリスクが高まるという意味だ。事実、終盤にはスーティル(ザウバー)に続いてビアンキがスピンアウト。不運にも事故処理中の重機に衝突した。

 警告はもう1つあった。9周目の正規スタート前後、ドライバー達が「大雨用ウェットより小雨用インターミディエイトを!」と無線でタイヤ交換を訴えた。まだ水煙が上がっているのに溝が少ない小雨用を要求したのは、今年変更された大雨用スペックの感触がマッチングしなかったからだろう。後に勝者ハミルトンは「僕のマシンでは(ダウンフォースがあるから)コンディションは危険なほどではなかった」と語ったが、3位のベッテルは「どちら(のタイヤ)を選択するのもボーダーラインだった」と述べた。

 連戦のロシアGP前の今、必要なのはスタート前まで遡り、すべての事象を精査することだ。ビアンキの名誉のために付言するが、彼に何一つミスは無かった。

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