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九州場所でも大暴れ必至、“ザンバラ髪”の逸ノ城。
~横綱大関が慄くシャイな怪物~ 

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byKYODO

posted2014/10/09 16:30

九州場所でも大暴れ必至、“ザンバラ髪”の逸ノ城。~横綱大関が慄くシャイな怪物~<Number Web> photograph by KYODO

「自分、新入幕なのになんで大関と当たるんですかね?」

 初の大関戦を控えた前夜、鉄板焼き店で600gのステーキをたいらげた逸ノ城は、まだまだ物足りなさそうな顔で、部屋のおかみさんにそう問うたという。

 先の大相撲9月場所。ザンバラ髪の貴公子だった遠藤に代わるかのように、「ザンバラ髪の怪物」が出現した。連日、満員御礼の垂れ幕が下がる両国国技館の主役は、新大関の豪栄道でも31回目の優勝に挑む白鵬でもなかった。

 それは東前頭十枚目、新入幕の逸ノ城だった。身長192cm、体重199kgの巨漢で、その太もも周りは92cmを計測。数あまた多いるモンゴル出身力士のなかでも、唯一の遊牧民生活者で、その性格は大草原のごとくおおらかで鷹揚、はにかみがちに口を開くその姿は、シャイでいて純朴。幼少の頃から馬にまたがって羊を追い、ブフ―モンゴル相撲を取って遊んでいた自然児が、土俵の上で怪物と化したのだ。

稀勢の里戦での変化に観客からため息が漏れたが……。

 並み居るベテラン力士たちを、まさに「ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」。横綱白鵬を追走し、1敗で迎えた11日目には、異例の「割り崩し」として、まずは大関稀勢の里戦が組まれたのだった。

 この時、上位陣初挑戦の大一番を、師匠の湊親方(元湊富士)は、通路でひっそりと見守っていた。2度つっかけて立ち合い左に変化してのはたき込み。逸ノ城が勝ち名乗りを受けるも、熱戦を期待していた観客からはため息が漏れたものだった。

「思い切り当たって行こうとしてるのに、大関が合わせなかったのだから、あれはしょうがないかな……」

 師匠は複雑な表情で苦笑いを浮かべたが、当の逸ノ城は、なんら臆することなく自らの戦術を語っていた。

「自分の右四つの形になるよう、右を差して行こうと思って、前に出たかったんですけど。2度待ったがあって、考えを変えた。左に変わって、そこから左上手が取れればいいと思った。よくない相撲でしたけど」

【次ページ】 クレバーさを兼備する21歳のさらなる課題とは?

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